著者
岸下 昭弘 堤 耀広
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.55, no.10, pp.661-665, 1998

側鎖に極性基を有しないポリ (<SUP>L</SUP>-ロイシン) (PLL) は無極性ベンゼン溶液中で剛直な棒状のα-ヘリックス構造をとり分子軸方向に残基当たり3.6デバイユニットの大きな双極子メーメントをもつ. このため, 本研究ではこの系のゾルーゲル転移域で誘電緩和測定を行いPLL分子 (重合度500, 900) の動的挙動を調べた. 誘電率の実数部はゲル状態ではベンゼンと変わらないが, ゾルーゲル転移温度 (50℃) では110 Hz~100 kHzのいずれの周波数に対しても急激な増加を示した. これは, ゲル中で凍結されていたPLLの分子運動が架橋崩壊により協同的に解放されることを示す. ゾル状態で誘電率は濃度とともに増加するが, 或濃度域からは逆に減少した. また, 実測誘電率は会合のない希薄溶液に対する理論値に比べ極めて小さい. 以上のことから反平行配列型分子会合の存在が示唆された. 部分的にランダムコイルである, <SUP>L</SUP>-ロイシンと<SUP>L</SUP>-ロイシンとの共重合体 (PLDL) についても同様の測定を行った結果, 架橋形成には主鎖がα-ヘリックス構造をとり, 分子間会合することが重要であることがわかった.