著者
岸井 兼一
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.127, no.5, pp.408-414, 2006 (Released:2006-07-01)
参考文献数
21
被引用文献数
1 2

ルリコナゾールはジチオラン骨格を有し,光学活性な新規イミダゾール系抗真菌薬である.糸状菌,カンジダ属菌,癜風菌等に広い抗菌スペクトルを有し,特に皮膚糸状菌に対して強力な抗真菌活性を示した.Trichophyton (T) rubrumおよびT. mentagrophytesに対するMIC90値は,0.001 μg/mLであった.1%ルリコナゾールクリームをモルモット足底部皮膚に単回または反復塗布したとき,皮膚角層中に高濃度の薬物の貯留が認められ,モルモット足白癬モデルにおいて,短期間塗布で対照薬(塩酸テルビナフィン,ビホナゾール)より優れた治療効果を示した.作用メカニズムは真菌細胞膜の構成成分であるエルゴステロール合成系のラノステロール-14α-デメチラーゼ活性の阻害作用である.これまで実施されてきた足白癬に対する臨床試験では,その殆どが4週間の塗布期間でおこなわれてきた.ルリコンの臨床試験では塗布期間を半分の2週間で行い,塗布開始後4週間目に有効性判定した.第III相試験では足白癬に対し,ルリコンクリーム1%は2週間塗布(その後2週間はプラセボ塗布),対照薬(1%ビホナゾールクリーム)は4週間塗布で比較試験を実施し,塗布開始後4週目の時点で判定した結果,皮膚症状改善度はそれぞれ91.5%,91.7%,真菌学的効果は76.1%,75.9%となり,ルリコンクリーム1%および対照薬の皮膚症状改善度ならびに真菌学的効果はいずれもほぼ同等であり非劣性が検証された.ルリコンクリーム1%は短期間塗布で優れた臨床効果を示した.足白癬以外にも生毛部白癬,皮膚カンジダ症,癜風に対する臨床効果においても,これまで実施されてきた半分の塗布期間である1週間塗布で行い,優れた有効性安全性を確認した.また,ルリコン液1%は,2週間の塗布でルリコンクリーム1%とほぼ同等の有効性,安全性結果が得られた.