著者
岸尾 昌子 青柳 康夫
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.232-243, 2014-06-15 (Released:2014-07-31)
参考文献数
31
被引用文献数
4 5

還元糖生成能には品種によって有意差がある.ヒノヒカリ,ひとめぼれ,あきたこまち,コシヒカリといった,一般に良食味とされる品種は60℃浸漬時に胚乳中心部の還元糖生成能が高く,一方,キヌヒカリは20℃・40℃浸漬時の胚乳外縁部の還元糖生成能が高い傾向が見られた.日本晴はいずれの品種よりも低かった.また,産地間に還元糖生成能に差がある可能性が示唆された.北日本の地域の産米は60℃浸漬時における胚乳中心部の還元糖生成能が高い傾向が見られ,それに対して南日本の産米は20℃・40℃浸漬時の胚乳外縁部の還元糖生成能が高い傾向が見られたが,さらなる検証が必要である.還元糖生成能に関与するとされるα-グルコシダーゼ,α-アミラーゼ,β-アミラーゼの各デンプン分解酵素の活性において,品種によって優位となる酵素に違いがあることが示唆された.α-グルコシダーゼが最も強く関与するのはいずれの品種にも共通するが,2番目に寄与するアミラーゼの種類が品種によって異なり.ヒノヒカリはβ-アミラーゼ,コシヒカリはα-アミラーゼが2位で寄与すると分析された.食味に大きな影響を与えるとされる中心部の酵素活性において,1位と2位の酵素活性の寄与度はほぼ同等であった.α-グルコシダーゼに次いで優位に働く酵素は,ヒノヒカリとコシヒカリの場合,β-アミラーゼと分析された.日本晴の中心部にはα-グルコシダーゼおよびα-アミラーゼよりも,β-アミラーゼ様のマルトース生成酵素が寄与すると分析された.このような品種間の違いが,食味の違いに影響を与えている可能性が考えられた.胚乳外縁部の酵素活性においても,全品種の還元糖生成に最も強く影響する酵素はα-グルコシダーゼであった.しかし次に影響する酵素には品種ごとに違いがあり,ヒノヒカリはβ-アミラーゼ,コシヒカリはα-アミラーゼが2位で寄与すると分析された.日本晴はα-グルコシダーゼ,α-アミラーゼ,β-アミラーゼ様の酵素の順に還元糖生成に寄与すると分析された.上記3種のデンプン分解酵素は,品種により異なる活性を示し,それによって生成する還元糖の組成と生成量の違いが生ずると考えられた.