著者
岸本 亜野
出版者
武庫川女子大学
巻号頁・発行日
pp.1-38, 2016-03-20

ベルベリンは、キハダやオウレンなどの植物に含まれている成分である。抗菌、抗炎症、止寫作用があり、主に止寫薬として用いられている。また、血糖、血圧および血中脂質低下作用が報告されており、生活習慣病予防に有用であることが示唆されている。 本研究では、腎障害を発症する高血圧自然発症ラット(SHR)を用いて、ベルベリンによる血圧および腎障害への影響を検討した。その結果、ベルベリン投与により、血圧の低下の影響なしに腎障害の軽減作用が認められたことを新規に示し、血圧低下以外の因子がベルベリンによる腎障害軽減に関与している可能性を示した。また、体重増加が抑制され、後腹膜脂肪および腸間膜脂肪のより大きい減少が関与していることが新たに示唆された。さらに詳細なメカニズムを検討するため、in vitroで解析を行った。in vitro の解析では、マウス前駆脂肪細胞の培養株である 3T3-L1 細胞を用いてベルベリンの影響を検討した。その結果、ベルベリン添加により3T3-L1 脂肪細胞の脂肪滴およびトリグリセリドが減少した。また、脂肪細胞特異的遺伝子の発現を抑制し、前駆脂肪細胞から脂肪細胞への分化を抑制することが示唆された。さらに、ベルベリンが 3T3-L1 脂肪細胞における活性酸素種を減少させることが新規に認められ、酸化ストレスの改善作用は抗酸化酵素である GPx の上昇が起因していると考えられた。 本研究で得られた結果より、ベルベリンは、血圧に影響せずに腎障害の軽減作用があること、および肥満を基盤とした生活習慣病に有用であることが示唆された。