著者
菊地 勝一 松塚 文夫 岸本 昌浩
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.19-23, 2014 (Released:2014-04-30)
参考文献数
18

背景:われわれの施設における甲状腺手術時術後副甲状腺機能低下症の頻度を検討し,副甲状腺の取り扱いについて考察した。 対象,方法:平成20年から24年まで,明和病院において行った248例の甲状腺手術例中,全摘(超亜全摘)術は63例,葉切除術は185例であった。全摘(超亜全摘)術の内訳は,分化癌:36例(乳頭癌35例,瀘胞癌1例),腺腫(多発):3例,バセドウ病:19例(全摘:9例,超亜全摘:10例),橋本病:5例である。手術は原則,分化癌は全摘か葉切除,バセドウ病,橋本病,腺腫は全摘,超亜全摘術を行っている。この全摘(超亜全摘)術について,術後副甲状腺機能低下症の頻度を検討した。副甲状腺の取り扱いについては,疾患の如何に関わらず,上副甲状腺については可及的に温存,下副甲状腺については,可及的同定,摘出筋肉内移植をした。一過性は,1~2カ月後にi-PTHが回復カルシウム剤,ビタミンD3の投与をやめた症例,永久性はそれ以後も投与を続けた症例と定義した。われわれのテタニーの標準対処は,カルチコール2A+生食100ml/1時間点滴,経口的としてアスパラCa8錠(分4),ビタミンD3(2μg)投与である。 結果:葉切除185例の副甲状腺機能低下合併症はなかった。全摘(超亜全摘)術は63例の甲状腺術後,副甲状腺機能低下合併症は11例(17%),内訳は一過性9例(14%),永久性2例(3%)であった。分化癌36例中,副甲状腺機能低下合併症は9例(25%),内訳は一過性7例(19%),永久性2例(6%)であった。バセドウ病19例中,一過性副甲状腺機能低下1例(5%)で亜全摘(超亜全摘)の症例であった。橋本病 全摘5例中一過性副甲状腺機能低下1例(20%)であった。強いテタニー,全身けいれんを伴う症例は2例あり,バセドウ病とやせた甲状腺癌の全摘症例であった。 結論:1.一般病院における甲状腺術後,副甲状腺機能低下症の頻度を報告した。2.副甲状腺の同定と筋肉内移植は永久性副甲状腺機能低下症を避けるためには妥当な方法と思われた。