著者
田島 文博 中村 健 峠 康
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

【目的】健常者における運動時の免疫機能はNatural Killer細胞(NK細胞)活性を指標として、多数の報告がある。しかし、脊髄損傷者においては、我々が車いすフルマラソンではレース直後にNK細胞活性が低下し、ハーフマラソンでは上昇する事が知られているだけである。今回我々は、実験室で運動強度を一定にし、2時間の運動を継続した時の免疫機能の変動を調査した。【方法】対象は男性脊髄損傷者7名(脊損者、年齢34.3±7.1歳、損傷レベルTh11〜L4)と健常男性6名(健常者、年齢28.8±7.7歳)とした。予めハンドエルゴメーターで被験者の最大酸素摂取量(VO2max)を測定した結果、脊損者は27.9±3.0ml/min、健常者は25.7±4.1ml/minであり、両群に有意差を認めなかった。VO2max測定とは別の日に、被験者はそれぞれのVO2maxの60%で2時間ハンドエルゴメーター運動を行った。採血は、運動前、1時間運動後、運動終了直後、終了後2時間の4回行い、白血球数、アドレナリン、NK細胞数、NK細胞活性を測定した。別の日に運動を行わないタイムコントロール実験を行った。【結果】健常者の白血球数と血中アドレナリンは運動直後に有意な上昇を見た。NK細胞数は運動直後の変動は有意ではなかったが、NK細胞活性は運動直後に有意に低下し、2時間後に回復した。【考察】車いすフルマラソンの実験モデルを行い、NK細胞活性は低下した。しかし、NK細胞活性は2時間後には回復した事から、車いすマラソンで選手が感染に留意する時間は数時間で良いと考えられる。