- 著者
-
峯 布由紀
- 出版者
- 公益社団法人 日本語教育学会
- 雑誌
- 日本語教育 (ISSN:03894037)
- 巻号頁・発行日
- vol.173, pp.61-68, 2019-08-25 (Released:2021-08-28)
- 参考文献数
- 13
本稿では,学習者の発話における文脈の時間の流れを表すテイ (ル) の習得に注目し、日本語の発達段階におけるその位置づけを検証する。峯 (2015) は,文脈の時間の流れを表すテイ (ル) は複文処理が可能なレベルで使用できるようになる形式であるとし,かなり熟達した学習者にもその誤用が見られると報告している。しかし,峯 (2015) では誤用が分析されており,学習者が使用するようになる時期についてはデータで確認されていない。 そこで,本研究では,学習者コーパスに所収されているストーリーテリングの発話を分析し,文脈の時間の流れを表すテイ (ル) と,複文処理を必要とする接続辞の使用の分布分析を行った。Implicational Scalingを用いて検定を行ったところ,この二つの使用に含意的な階層は認められなかった。これは文脈の時間の流れを表すテイ (ル) は複文処理が可能なレベルで使用可能となる項目であることを支持する結果と考えられる。