著者
峰島 厚
出版者
全国障害者問題研究会
雑誌
障害者問題研究 (ISSN:03884155)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.82-87, 2008-08
被引用文献数
1

障害者自立支援法施行後、安倍内閣は「再チャレンジ支援総合プラン」・「成長力底上げ戦略」による「就労支援施策」を重点とする障害者施策を打ち出した。障害者自立支援法が一般就労への移行を重視しているのと同じく一般就労を一面的に重視するものではあるが、それとは異なった性格を有している。安倍内閣の「就労支援施策」は、労働者としての労働条件、身分保障を問うことなく、少しでも働いて稼ぎ納税者になり、「福祉の支え手」(福祉の対象(使い手)でなくなる)となることをねらったものである。それは、格差と貧困のもと福祉ニーズをもつにいたった人々を雇用対策の対象にすりかえ、劣悪な労働条件で身分不安定のままに働く底辺労働者としてかり出すという、貧困と格差温存の、そして結果的には福祉ニーズの縮減、福祉施策の縮小に目的があった。そして国民の批判を受けて失墜した安倍内閣に代わって福田内閣が誕生するが、本論ではここ数年の国の施策を分析し、この福田内閣のもとでも「社会福祉の機能強化」を名目として再び障害者自立支援法による障害者の介護制度と介護保険制度との吸収合併がねらわれていると問題提起した。