- 著者
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島 栄恵
港 敏則
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)
- 巻号頁・発行日
- pp.B3P3315, 2009 (Released:2009-04-25)
【目的】重症心身障害児(者)の摂食にあたっては、誤嚥による肺炎の併発に注意が必要となる.そして重症になるほど、摂食に対し慎重にならざるをえず、経鼻経管栄養を余儀なくされる.今回、重症心身障害児(者)の摂食状況を調査し、摂食機能についてどのような発達段階にあるのか検討した.【対象】摂食可能な2~22歳(平均9.25歳)の重症心身障害児(者)12名.摂食は全員介助を要す.改訂大島分類では、A1:5名、A2:3名、A3:2名、A4:1名、B1:1名.そのうち、気管切開2名、人工呼吸器の装着はなし.1名は喉頭気管分離術を施行している.食形態は軟食3名、トロミ食9名.摂食機能に関わる原始反射の出現状況と捕食機能における口唇閉鎖の有無を、摂食機能の正常発達と比較検討した.保護者に文章による同意を得て行った.【結果】捕食時に口唇閉鎖がみられたのは軟食を摂取している3名で、咀嚼は歯茎で押しつぶすような動作を1~2回行い、すぐに嚥下動作を行っていた.一方、残りの9名は、捕食時口唇閉鎖せずに、開口したままの状態であった.そして、咀嚼は、スピードや動きに差があるものの、開口したままで下顎の上下運動と舌の前後・上下運動を行なうマンチング(munching)が主にみられていた.また、その9名は口唇閉鎖をせずにサックリング(suckling)での嚥下がみられた.捕食時に口唇閉鎖を行なっていた3名は、軽く口唇閉鎖をしたサッキング(sucking)がみられていた.また、サックリング(suckling)での嚥下を行う7名に量に差はあるものの、舌で多くの食塊を口腔外へ押し出す行為がみられていた.またその中で5名においては誤嚥がみられていた.【考察】捕食時に口唇閉鎖がみられない理由として、生後5~6ヶ月頃消失する探索反射が残存している場合、口唇部にスプーンが接触すると探索反射が誘発され口唇閉鎖に至らないと言われており、そのためと考える.また舌で多くの食塊を口腔外へ押し出す現象も、探索反射や吸啜反射に基づく反射的吸啜が残存している場合、口唇閉鎖ができない状態で舌が前後に動くため大部分が押し出されると言われている.また、口唇閉鎖がみられた3名において、十分な咀嚼は行なわれておらずほぼ丸飲みの状態で、これは食塊が口腔内に入ることにより、6~7ヶ月に消失する咬反射の残存による弱い咀嚼と、丸飲みはマンチングの段階の咀嚼と言われており、その状態であると考える.【まとめ】摂食機能に関わる原始反射の消失は、生後5~6ヶ月に集中しており、離乳期に合わせて消失時期に入る.しかし、今回、評価を行った12名の重症心身障害児(者)の摂食状況には探索反射、吸啜反射に基づく反射的吸啜や咬反射などの原始反射の残存、マンチングの段階の咀嚼機能であることから、12名において乳児嚥下の状態が続いているといえる.