著者
嶋 雅範
出版者
一般社団法人 日本外科感染症学会
雑誌
日本外科感染症学会雑誌 (ISSN:13495755)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.642-648, 2019-12-31 (Released:2020-02-14)
参考文献数
16

人工呼吸器関連肺炎(ventilator-associated pneumonia:以下,VAP)の発生率を低減するため,National Healthcare Safety Network(以下,NHSN)は,成人のVAPサーベイランスとして2013年に人工呼吸器関連イベント(Ventilator-Associated Events:以下,VAE)サーベイランスを開始している。VAEサーベイランスは,患者予後と相関していることや,判定が簡便で電子化が期待できるなどの利点がある。一方でVAPサーベイランス結果と相違があることや,発生率の解釈が不明確であること,結果が人工呼吸器の管理方法に左右されるといった問題点もある。VAEサーベイランスは,肺炎だけでなく人工呼吸器を使用することによって起こる合併症すべてに焦点を当てたサーベイランスである。導入には人工呼吸器の設定を患者の状態にあった設定に管理できるような体制が望まれ,導入後も人工呼吸器管理を全般的に管理していく必要がある。VAEサーベイランスを活用するには,感染管理担当者だけでなく,さまざまなチームや職種と協働し発生率の低減に向け活動するべきである。