- 著者
-
嶋岡 麻耶
山勢 博彰
田戸 朝美
向江 剛
- 出版者
- 山口大学医学会
- 雑誌
- 山口医学 (ISSN:05131731)
- 巻号頁・発行日
- vol.71, no.2+3, pp.51-63, 2022-08-31 (Released:2022-11-02)
- 参考文献数
- 22
本研究の目的は,深部静脈血栓症の理学的予防法のうち足関節底背屈他動運動を取り入れたケアが下肢血行動態及び安楽に与える影響を明らかにすることである.
方法は,20歳以上40歳未満の健常女性16名に対し単純ランダム割付クロスオーバーデザインを用いて,intermittent pneumatic compression(IPC)を75分間装着する群(IPC群),IPCを15分間装着し除去後30分に1分間足関節底背屈他動運動の介入を行い,その後30分間IPCの再装着を行わない群(足関節運動群),IPCを15分間装着し除去後60分間IPCの再装着,及び足関節底背屈他動運動の介入を行わない群(IPC除去群)の3群を行った.下肢血行動態,凝固線溶反応,自律神経活動,主観的感覚を評価した.
足関節運動群は足関節底背屈他動運動後,大腿静脈最高血流速度及び脱酸素化ヘモグロビンの濃度変化(ΔHHb)が低下した.凝固線溶反応のうちフィブリンモノマー複合体(FMC),トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT),プラスミン-α2プラスミンインヒビター複合体(PIC)は介入による変化はなかった.自律神経活動のうちhigh-frequency component(HF)はIPC群で15分以降,他の2群と比較して低値で推移した.主観的感覚はIPC群が最も高値であった.
足関節運動群は下肢静脈うっ滞の増悪及び凝固能の亢進を生じず,IPCを継続使用した場合に生じる不快の感覚を軽減させる介入であることが示唆された.