著者
嶋田 美奈
出版者
パーソナルファイナンス学会
雑誌
パーソナルファイナンス学会年報
巻号頁・発行日
no.10, pp.49-59, 2010

貸金業法の改正以前、消費者金融大手7社は消費者金融市場を一層健全化することを目的とし、消費行動診断サービス及び家計管理診断サービスの開発と導入を行った。本稿は、日本貸金業協会が運営するサイトのインターネット上で利用できるこの診断ツールを用いて、消費行動診断や家計管理診断を利用した者に関して、消費行動や心理的な特徴、家計管理状態の特徴などを調査・分析を行ったものである。そこから多重債務者の可能性が高い者を抽出し、その特徴を心理学と行動経済学の観点から検討した。その結果、心理的特徴として、自己コントロールカ、思考的熟慮性と計画性が低く楽観的、生活や金銭への管理意識、金銭感覚が乏しい反面、衝動性やその場への満足感重視の傾向が強い。金銭的破綻の危機感はあるが、借入に対する抵抗感が低く、安易に債務返済を繰り返し行う対処能力の低さ、対処スキルの未熟さが示された。この傾向を行動経済学の現状維持バイアスの視点から見ると、即自的現在消費への満足感に価値を置くため、借りては返すという行為を繰り返しながら、消費や借金を続ける傾向が高く、セルフコントロール機能が不全である。負債が増加する要因として、安易さ手軽さを好み、簡単にクレジットにアクセスできることとその機会があること、将来の消費への価値が低いことなどが示された。