著者
嶺山 敦子
出版者
一般社団法人 日本社会福祉学会
雑誌
社会福祉学 (ISSN:09110232)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.41-53, 2012

久布白落実は廃娼運動・売春防止法制定運動,それらの善後策として性教育への取り組み等を通して,性をめぐる諸問題に取り組んだ婦人運動家である.それらと関連し,久布白は占頷下において発生した「混血児問題」にも関心を寄せ,その問題に熱心に取り組んだ.久布白は「混血児」の養育に直接携わったわけではないが,その数を正確に把握することによって,問題の実態をつかんでいった.当初は「混血児」が孤児であることを問題と考えていたが,実態を把握するにつれ,政府や社会が光を当てていなかった,片親が養育している「混血児」に対する認知と扶助の必要性を認識し始めた.久布白がアメリカの宣教師モルフィと連携しその認知と扶助の斡旋を行ったことは,「混血児」の母親の権利擁護という視点から考えても意義深いものと思われる.また,混血児問題への取り組みを通して,性の問題に関する日本の戦争責任や平和への認識を深めていった.