著者
川原逸朗
出版者
佐賀県有明水産振興センター
雑誌
佐賀県有明水産振興センター研究報告 = Bulletin of Saga Prefectural Ariake Fisheries Research and Development Center (ISSN:09191143)
巻号頁・発行日
no.22, pp.29-33, 2004-11
被引用文献数
7 12

タイラギ資源に及ぼすナルトビエイによる食害の影響について、定点観察による生息密度の推移と生息場の観察およびにナルトビエイの食性調査結果をもとに検討した。タイラギの造成漁場および天然漁場のいずれにおいても、4月以降の春季と9月から10月にかけての秋季の2回、急激な生息密度の低下(タイラギの消失)がみられ、その際に砕かれたタイラギの殻やすり鉢状の窪みが観察された。また、ナルトビエイの胃内容物を調査した結果、摂餌しているのは、アサリ、サルボウ等の二枚貝がほとんどで、その中にはタイラギが含まれていた。これらの調査結果と、ナルトビエイの摂餌生態や繁殖生態を総合的に考慮すると本調査でみられた造成漁場や天然漁場におけるタイラギ生息密度の低下は、ナルトビエイによる食害が原因であると考えれる。また、調査地点の生息数の減少状況から、タイラギ資源に及ぼすナルトビエイの食害の影響を試算した結果、食害はタイラギ資源の回復のためには解決すべき重要な問題と思われた。