著者
TAKITA T
出版者
佐賀県有明水産振興センター
雑誌
佐賀県有明水産振興センター研究報告 = Bulletin of Saga Prefectural Ariake Fisheries Research and Development Center (ISSN:09191143)
巻号頁・発行日
no.21, pp.81-98, 2003-07
被引用文献数
3 1

1999年4-9月と2000年4-10月に、六角川河口およびその沖のあんこう網と鹿島市沖の竹羽瀬で、漁獲物組成の経時的・地域的変化を検討した。49科88種の魚類が出現した。河口では、エツ、コイチ、スズキ、ワラスボとシマフグ、河口沖ではヒラ、サッパ、コノシロ、シログチ、ワラスボとアカシタビラメ、竹羽瀬では、サッパ、カタクチイワシ、シログチ、ネズミゴチとメイタガレイが優占した。優占種の多くは稚魚で、この海域が多くの魚種の成育場であることを示した。小型魚が河川感潮域または浅い海域に継続的に添加され、成長した個体から先に沖へ移動すると考えられた。河口域では、漁獲量と漁獲時塩分の相関が有意な魚種があり、河川感潮域に侵入する海水の濃度との関連のもとに上流部あるいは海域へ移動しつつ河口域を利用していることを示した。漁獲量と塩分が無関係な魚種も多く、塩分以外の要素も魚類の分布と移動を規定していると考えられた。環境条件が調査海域に類似の諌早湾奥部は、佐賀海域とともに有明海産魚類の成育を支えていたと考えられ、その消滅が有明海産魚類の再生産に及ぼす影響は大きいと考えられる。
著者
川原逸朗
出版者
佐賀県有明水産振興センター
雑誌
佐賀県有明水産振興センター研究報告 = Bulletin of Saga Prefectural Ariake Fisheries Research and Development Center (ISSN:09191143)
巻号頁・発行日
no.22, pp.29-33, 2004-11
被引用文献数
7 12

タイラギ資源に及ぼすナルトビエイによる食害の影響について、定点観察による生息密度の推移と生息場の観察およびにナルトビエイの食性調査結果をもとに検討した。タイラギの造成漁場および天然漁場のいずれにおいても、4月以降の春季と9月から10月にかけての秋季の2回、急激な生息密度の低下(タイラギの消失)がみられ、その際に砕かれたタイラギの殻やすり鉢状の窪みが観察された。また、ナルトビエイの胃内容物を調査した結果、摂餌しているのは、アサリ、サルボウ等の二枚貝がほとんどで、その中にはタイラギが含まれていた。これらの調査結果と、ナルトビエイの摂餌生態や繁殖生態を総合的に考慮すると本調査でみられた造成漁場や天然漁場におけるタイラギ生息密度の低下は、ナルトビエイによる食害が原因であると考えれる。また、調査地点の生息数の減少状況から、タイラギ資源に及ぼすナルトビエイの食害の影響を試算した結果、食害はタイラギ資源の回復のためには解決すべき重要な問題と思われた。
著者
伊藤史郎
出版者
佐賀県有明水産振興センター
雑誌
佐賀県有明水産振興センター研究報告 = Bulletin of Saga Prefectural Ariake Fisheries Research and Development Center (ISSN:09191143)
巻号頁・発行日
no.22, pp.69-80, 2004-11
被引用文献数
6

2000年度の「ノリ不作」により、有明海が抱えている問題がクローズアップされ、「有明異変」として社会問題となった。これを受け、平成14年11月29日に「有明特措法」が公布、施行され、有明海再生に向けた取り組みが始まった。本報では、有明海を取り巻く様々な環境の変化が潮汐流等の有明海特有の浄化能力の低下や濾過食性ベントスである貝類資源の減少をまねいて、さらなる悪化を引き起こしている現状を紹介し、有明海の環境が負の「スパイラル」に陥りつつあることを警告する。最後に、有明水産振興センターが行っている、負の「スパイラル」を正にするための重要な要因おなる貝類資源の回復に向けた独自の取り組みについて紹介する。
著者
真崎 邦彦 小野原 隆幸
出版者
佐賀県有明水産振興センター
雑誌
佐賀県有明水産振興センター研究報告 = Bulletin of Saga Prefectural Ariake Fisheries Research and Development Center (ISSN:09191143)
巻号頁・発行日
no.24, pp.13-18, 2009-09

有明海湾奥部のひび建て養殖漁場におけるサルボウ稚貝の発生と気象条件の関係を明らかにするために、1974年から2004年までの浮遊幼生および付着稚貝の発生量と佐賀地方気象台のデータを比較した。浮遊幼生の出現数は、水温26〜28℃、比重20以上の時に増加しピークに達した。最高出現数がみられる日は、31年間の平均で浮遊幼生が7月30日、付着稚貝は8月1日で、それぞれ梅雨明けから平均13、15日後であった。また、これらの日は、平均梅雨明け日の前10日間(7月8〜17日)の降水量により左右される傾向がみられた。また、採苗器の付着稚貝は干潮時に風浪の影響を受けやすく、特に出現のピークを過ぎてからこの影響により付着数が減少すると、サルボウ漁獲量の低下に繋がることが示唆された。