著者
下田 博司 川守 秀輔 河原 有三
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.279-287, 1998-10-10
被引用文献数
11 25

スリランカに自生するニシキギ科の植物サラシア・レティキュラータ (<i>Salacia reticulate</i>) より得た水抽出物 (SRE) の, 食後の過血糖に及ぼす作用を, ラットおよびヒトボランティアで検討した。SREはショ糖, 麦芽糖およびα化デンプン負荷によるラットの血糖値の上昇を用量依存的に抑制した。しかしながら, ブドウ糖や乳糖による血糖上昇に対しては, 抑制作用を示さなかった。ショ糖に対する血糖上昇抑制作用は, 他の麦芽糖やα化デンプンより強く, ショ糖負荷直前の投与で奏効し, 投与量の増加に伴い作用の持続時間も延長した。<br>次に, 各種グルコシダーゼおよびα-アミラーゼに対する阻害活性について検討を行ったところ, SREは酵母およびラット空腸由来のα-グルコシダーゼに対して強い阻害作用を示すとともに, α-アミラーゼに対しても阻害作用を示した。一方, β-グルコシダーゼの活性には影響を及ぼさなかった。SREのラット空腸由来各種α-グルコシダーゼに対する阻害活性の強度は, スクラーゼ=イソマルターゼ>マルターゼの順であった。さらに, 健常人ボランティアにショ糖 (50g) を負荷した耐糖能試験において, SREはショ糖負荷5分前200mgの服用で, 30分後の血糖値を有意に抑制した。<br>以上の結果より, SREはα-グルコシダーゼおよびα-アミラーゼ阻害作用に基づく過血糖抑制作用を有し, ヒトにおいても少量で食後の過血糖を抑制することが明らかとなり, 糖尿病患者の食事療法に応用できる有望な食品素材であると考えられる。