著者
藤林 真美 神谷 智康 高垣 欣也 森谷 敏夫
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.129-133, 2008 (Released:2009-01-27)
参考文献数
21
被引用文献数
9 7 4

現代人の多忙な生活の中で,簡便で即効性のある栄養補助食品が求められている。本研究では,GABAを30 mg含有したカプセルの経口摂取によるリラクセーション効果を,自律神経活動の観点から評価することを試みた。12名の健康な若年男性(21.7±0.8歳)を対象に,GABAとプラセボカプセルを摂取させ,摂取前(安静時),摂取30分および60分後の心電図を胸部CM5 誘導より測定した。自律神経活動は,心拍のゆらぎ(心電図R-R間隔)をパワースペクトル解析し,非観血的に交感神経活動と副交感神経活動を弁別定量化した。その結果,GABA摂取前と比較して,総自律神経活動は摂取30分後 (p<0.01) および 60分後 (p<0.05)に,副交感神経活動も摂取30分後 (p<0.05)に顕著な上昇を示した。これらの結果から,30 mgのGABA経口摂取は,自律神経系に作用しリラクセーション効果を有する可能性が示唆された。
著者
藤原 葉子 秋元 浩二 二宮 伸二 坂口 靖江 脊山 洋右
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.221-228, 2003-08-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
25
被引用文献数
3 2

ビタミンC (アスコルビン酸), L-システインおよびビタミンE (コハク酸d-α-トコフェロール) の併用による色素沈着抑制効果を, 褐色モルモットに経口摂取して検討した。背部を除毛後, 紫外線 (UV-B) を照射した褐色モルモットの皮膚色はメラニン色素の沈着によりL*値 (明度) が低下したが, ビタミンC単独摂取ではL*値の上昇傾向を示し, ビタミンCとL-システインの併用またはビタミンC, L-システインとビタミンEを併用することにより, 紫外線照射によるL*値の低下はいずれも有意に抑制された。紫外線照射部の表皮ではDOPA反応陽性のメラノサイト数が増加したが, ビタミンCとL-システインの併用またはビタミンC, L-システインとビタミンEの併用では, 対照群に比べて有意に減少した。L*値の低下抑制効果およびDOPA反応陽性メラノサイト数増加の抑制効果の程度は, いずれも (ビタミンC+L-システイン+ビタミンE群)>(ビタミンC+L-システイン群)>ビタミンC群であった。以上の結果から, ビタミンやシステインを組み合わせることによって, 経口摂取によってもUV照射によるメラニンの沈着を抑制できることがわかった。
著者
斎藤 雅文 堀 由美子 中島 啓
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.69-75, 2013 (Released:2013-04-19)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

人工甘味料の摂取が糖代謝に及ぼす影響を明らかにすることは,糖尿病患者や減量に関心のある人々にとって重要である。しかし,わが国では人工甘味料に関する疫学研究が進んでおらず,その摂取状況の把握と評価は困難であり,適否を判断することが難しい。そこで我々は,国内外の文献検索データベースから人工甘味料と肥満や糖尿病に関する論文を抽出し,研究デザインごとに内容を整理することとした。観察研究では,人工甘味料入り飲料の飲用習慣が肥満や糖尿病の発症に影響すると報告されており,介入研究では,人工甘味料の負荷は糖代謝へ影響しないこと,ショ糖を人工甘味料に代替した食事は体重や糖代謝に影響しないことが報告されていた。これらは欧米人を対象としたものであり,結果についても一様ではなかった。今後は,人工甘味料に関するわが国でのエビデンスを蓄積するために,日本人での記述疫学や観察研究などによる情報の集積が求められる。
著者
森滝 望 井上 和生 山崎 英恵
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.133-139, 2018 (Released:2018-06-15)
参考文献数
22

日本食の風味を支える出汁は, 心身への健康機能を有することが最近の研究により明らかにされてきているが, いずれの報告も長期摂取による効果に着目しており, 短期的な影響については知見が乏しい。本研究では, 出汁の単回摂取による効果を明らかにすることを目的とし, 鰹と昆布の合わせ出汁の摂取および香気の吸入が自律神経活動および精神的疲労に及ぼす影響について検討を行った。24名の健康で非喫煙のボランティアが本研究に参加した。被験者は, 9: 00に指定の朝食を摂取し, 10: 30—11: 30に実験を実施した。自律神経活動は心拍変動解析により評価し, 疲労の評価では, 一定の疲労負荷として単純な計算タスク (内田クレペリンテスト) を30分間課し, その前後でフリッカー試験を実施した。加えて, Visual Analogue Scale (VAS) を用い, 主観的な疲労度および試料に対する嗜好度を評価した。出汁の単回摂取では, 対照の水と比べて, 心拍数低下と副交感神経活動の一過性上昇が認められた。また, 出汁の香気吸入でも同様の効果がみられた。さらに, 出汁の単回摂取により, 計算タスク後のフリッカー値低下が抑制され, VASの結果より主観的な疲労度も軽減されていることが示された。これらの結果から, 出汁の摂取は副交感神経活動を上昇させる作用を介して, リラックスと抗疲労の効果を誘起する可能性が示唆され, その作用における香気成分の重要性が示された。
著者
山下 広美
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.171-176, 2014 (Released:2014-08-25)
参考文献数
26

酢酸は, 生体において空腹時に脂肪酸からβ酸化により生成される内因性の成分であり, 骨格筋などで生体燃料として利用される。一方, 外因性に酢酸を摂取すると酢酸は容易に血中に移行し組織に速やかに取り込まれた後, その代謝過程でAMPを生成し細胞内のAMP/ATP比を増加させてAMPキナーゼ (AMPK) を活性化させる。2型糖尿病の病態モデル動物に酢酸を継続的に摂取させると, 肥満が抑制され耐糖能を改善させる。また肝臓において脂肪合成関連遺伝子の転写量を低下させることから, 酢酸は脂肪合成を抑制するように作用すると示唆される。その他エネルギー消費割合の増加, 白色および褐色脂肪組織においては脂肪滴肥大化の抑制が見られる。以上より酢酸は空腹時には内因性の成分として生成され生体燃料として利用されるが, 摂食時に酢酸を摂取すると脂肪合成の抑制による肥満の抑制, さらに肥満に起因した2型糖尿病予防効果をもたらすと示唆される。
著者
永井 成美 山本 百希奈 御堂 直樹 磯村 隆士 脇坂 しおり 森谷 敏夫
出版者
日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiy◆U014D◆ shokury◆U014D◆ gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.279-285, 2010-12-10
被引用文献数
6 3

本研究の目的は, スープ摂取後の安堵感(心がほっと安らぐ感覚)の定量的評価を行い, スープの種類による安堵感の違い, および安堵感に影響を及ぼす心理的, 生理的要因を検討することである。予備試験では, 訓練された6名のパネルによる官能検査を4種類のサンプル(コーンポタージュ[90 kcal], チキンコンソメ[43 kcal], および等エネルギーで風味に乏しいコーン・プラセボ, チキン・プラセボ)について行い, 各サンプルの特性を位置づけた。本試験では, 前夜から絶食した11名の女性(22.6±0.3歳)に, スープサンプルを朝食として, 異なる4日間にランダムな順序で負荷した。安堵感スコア, 満腹感スコア, 心拍数, 交感・副交感神経活動(心拍変動解析による), エネルギー消費量(呼気ガス分析による)を, スープ摂取前および摂取1時間後まで経時的に測定した。サンプルへの嗜好スコアは, コーンポタージュ, チキンコンソメの順に高く, 両プラセボで最も低かった。スープ摂取後の安堵感は, コーンポタージュでは他のスープサンプルより有意に高値を示した。安堵感は, 嗜好スコア, 満腹感スコア, 心拍数と正相関し, 副交感神経活動と負の相関を示した。本結果から, コーンポタージュ摂取後の高い安堵感には, スープへの嗜好性, および摂取後の満腹感と心拍数の上昇が関連していることが示唆された。
著者
藤林 真美 神谷 智康 高垣 欣也 森谷 敏夫
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.129-133, 2008-06-10
被引用文献数
3 7

現代人の多忙な生活の中で,簡便で即効性のある栄養補助食品が求められている。本研究では,GABAを30 mg含有したカプセルの経口摂取によるリラクセーション効果を,自律神経活動の観点から評価することを試みた。12名の健康な若年男性(21.7±0.8歳)を対象に,GABAとプラセボカプセルを摂取させ,摂取前(安静時),摂取30分および60分後の心電図を胸部CM<SUB>5</SUB> 誘導より測定した。自律神経活動は,心拍のゆらぎ(心電図R-R間隔)をパワースペクトル解析し,非観血的に交感神経活動と副交感神経活動を弁別定量化した。その結果,GABA摂取前と比較して,総自律神経活動は摂取30分後 (<I>p</I><0.01) および 60分後 (<I>p</I><0.05)に,副交感神経活動も摂取30分後 (<I>p</I><0.05)に顕著な上昇を示した。これらの結果から,30 mgのGABA経口摂取は,自律神経系に作用しリラクセーション効果を有する可能性が示唆された。
著者
関野 由香 柏 絵理子 中村 丁次
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.101-106, 2010 (Released:2010-07-22)
参考文献数
20
被引用文献数
7 3

社会環境の変化にともない, 夜間生活が一般化してきている。本研究では, 夜遅い時刻の食事摂取が, 食事誘発性熱産生 (DIT) に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。喫煙習慣のない健康な女子大学生 (平均年齢20.5±1.2歳) 33名を対象に, 一律500 kcalの食事を, 7: 00, 13: 00, 19: 00に摂取する朝型と, 13: 00, 19: 00, 1: 00に摂取する夜型の2種類設定し, クロスオーバー法にてDITを測定, 評価した。朝型では7: 00の食事のDITが, 他の時刻の値に比べて有意に高く (p<0.05), 夜型では深夜1:00の食事のDITが, 他の時刻の値に比べて有意に低くなった (p<0.01) 。3食分のDITを合計した3食合計DITは, 夜型が朝型より有意に低くなった (p<0.01) 。このことから, 朝食を欠食し夜食を摂取した夜型化は, DITの低下により1日のエネルギー消費量を減少させ, 肥満の一要因になる可能性が示唆された。
著者
奥 恒行 田辺 賢一 渡邊 有希 尾野 春子 成瀬 真理 中村 禎子
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.233-240, 2007-10-10 (Released:2009-01-30)
参考文献数
22
被引用文献数
4 4

本研究ではフラクトオリゴ糖 (FOS), ラクチュロース (LAT), ガラクトシルスクロース (GS) およびイソマルトオリゴ糖 (IMO) を用いて難消化性オリゴ糖の性状の違いがCaならびにMg代謝に及ぼす影響を比較・検討した。飼料組成は各オリゴ糖10%添加飼料とし, 対照にはスクロースを用いた。Wistar系雄ラット (3週齢) を1群6匹で44日間個別飼育し, 6週間後に出納実験を行った。なお, 給餌量は同一になるように軽い制限給餌とした。CaおよびMgは原子吸光法により測定した。尿中デオキシピリジノリン (DPD) はEIA法を用いて測定した。消化されないFOSおよびLATは腸管からのCaならびにMg吸収を促進し, 大腿骨中のCaおよびMg含有量を増加させた。しかし, 部分消化性のGSの効果はやや弱く, 消化性のIMOの効果はさらに弱かった。消化されにくいオリゴ糖は尿中DPD排泄量も低下させた。以上の結果, 難消化性オリゴ糖のCaおよびMg代謝への影響は, オリゴ糖の種類, 特に消化性の低いものほどCaおよびMgの腸管からの吸収を促進することが明らかになった。
著者
長澤 孝志
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.3-10, 2018 (Released:2018-03-01)
参考文献数
29

食品成分による筋萎縮抑制機構を明らかにするためには, 合成や分解に関わる因子の活性を測定するだけではなく, 合成・分解速度を直接測定することが重要である。骨格筋 (筋原線維) タンパク質の分解速度を測定するために, 3-メチルヒスチジンを用いた方法を尿だけではなく血中, 動静脈差, 後肢筋灌流, 単離筋肉切片, 培養筋細胞においても応用し, 正確かつ短期間の骨格筋タンパク質の分解速度を評価する方法を確立した。この方法を用いて, ラットにおいてロイシンやリシンの摂取により骨格筋タンパク質の分解を抑制できることが示され, その機構としてAktを介したオートファジー形成のダウンレギュレーションであることが明らかになった。リシンの筋萎縮抑制効果は, 加齢に伴う筋肉量の減少 (サルコペニア) のモデルであるSAMP8マウスにおいても認められた。このように, アミノ酸の摂取は骨格筋タンパク質の合成だけでなく, 分解も調節することで, 低栄養, 加齢, 疾病時の筋萎縮を抑制できることが期待される。
著者
奥 恒行 藤田 温彦 細谷 憲政
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.301-303, 1983 (Released:2010-02-22)
参考文献数
11
被引用文献数
2

Eight healthy subjects (average age 27. 5 years old) were orally administered 200 ml of the control solution (containing 50 g of glucose) or the test solutions (containing 50 g of glucose and 5 g of glucomannan or cellulose), and compared with the suppressive effect on the enhancement of blood glucose level.Glucomannan delayed the intestinal absorption of glucose and could significantly suppress the maximal level of blood glucose, but cellulose could not. Addition of pullulan of 5 or 10 g to glucose solution also did not show the suppressive effect on blood glucose level.
著者
永井 成美 山本 百希奈 御堂 直樹 磯村 隆士 脇坂 しおり 森谷 敏夫
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.279-285, 2010 (Released:2011-02-15)
参考文献数
19
被引用文献数
3 3

本研究の目的は, スープ摂取後の安堵感(心がほっと安らぐ感覚)の定量的評価を行い, スープの種類による安堵感の違い, および安堵感に影響を及ぼす心理的, 生理的要因を検討することである。予備試験では, 訓練された6名のパネルによる官能検査を4種類のサンプル(コーンポタージュ[90 kcal], チキンコンソメ[43 kcal], および等エネルギーで風味に乏しいコーン・プラセボ, チキン・プラセボ)について行い, 各サンプルの特性を位置づけた。本試験では, 前夜から絶食した11名の女性(22.6±0.3歳)に, スープサンプルを朝食として, 異なる4日間にランダムな順序で負荷した。安堵感スコア, 満腹感スコア, 心拍数, 交感・副交感神経活動(心拍変動解析による), エネルギー消費量(呼気ガス分析による)を, スープ摂取前および摂取1時間後まで経時的に測定した。サンプルへの嗜好スコアは, コーンポタージュ, チキンコンソメの順に高く, 両プラセボで最も低かった。スープ摂取後の安堵感は, コーンポタージュでは他のスープサンプルより有意に高値を示した。安堵感は, 嗜好スコア, 満腹感スコア, 心拍数と正相関し, 副交感神経活動と負の相関を示した。本結果から, コーンポタージュ摂取後の高い安堵感には, スープへの嗜好性, および摂取後の満腹感と心拍数の上昇が関連していることが示唆された。
著者
伴野 太平 小森 ゆみ子 鈴木 聡美 田辺 可奈 笠岡 誠一 辨野 義己
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.229-235, 2016 (Released:2016-10-21)
参考文献数
32

さつまいもの一種である紅天使を健康な女子大学生22人に摂取させた。加熱後皮をむいた紅天使の食物繊維は2.9 g/100 gだった。摂取開始前1週間を対照期とし, その後1週間単位で紅天使を1日300 g, 0 g, 100 gとそれぞれ摂取させた。排便のたびに手元にある直方体の木片 (37 cm3) と糞便を見比べ便量を目測した。その結果, 対照期には1.8±0.2 (個分/1日平均) だった排便量が, 300 gの紅天使摂取により約1.6倍に, 100 g摂取により約1.5倍に増加した。排便回数も紅天使摂取量の増加に伴い増加した。300 g摂取でお腹の調子は良くなり便が柔らかくなったと評価されたが, 膨満感に有意な変化はなかった。各期の最終日には便の一部を採取し, 腸内常在菌構成を16S rRNA遺伝子を用いたT-RFLP法により解析した結果, 紅天使摂取により酪酸産生菌として知られるFaecalibacterium属を含む分類単位の占有率が有意に増加した。
著者
石田 眞弓 手塚 宏幸 長谷川 智美 曹 利麗 今田 敏文 木村 英一郎 松本 英希 河野 るみ子 新井 平伊
出版者
日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.305-311, 2011
被引用文献数
2

食塩の過剰摂取は血圧上昇の一因であり, 脳卒中や心臓疾患の原因と考えられている。近年, これら疾病の予防や病態の改善を目的とする減塩食の必要性が高まっているが, 料理中の食塩を減らすと味がもの足りなくなり, 病院給食では入院患者の摂食量低下による栄養摂取量の不足が問題となる。我々は, ナトリウム (Na) を含まないうま味物質であるグルタミン酸マグネシウム (MDG) を用い, おいしさを維持した減塩料理の提供を試みた。通常の病院給食として供食している通常料理, Na量を減らした減塩料理とMDGを用いたうま味添加減塩料理の3通りの料理についての官能特性を比較した。その結果, 減塩料理は通常料理に比べて全ての項目で低値を示し, うま味添加減塩料理では顕著に改善した。この結果から, 通常料理を減塩する際にうま味を呈するMDGを用いても料理のおいしさを損なうことなく, Na摂取量を減らす有効な方法であると考えられる。
著者
喜多村 尚 小原 郁夫
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.291-296, 2009 (Released:2010-01-29)
参考文献数
24
被引用文献数
1

基本4味に対する味覚感度の月経周期における変動については明らかにはなっていない。本研究は, ヒトの月経周期による基本4味 (甘味, 酸味, 苦味, 塩味) に対する味覚感度の変動について検討した。卵胞期と黄体期が明らかである基礎体温パターンを示した11名の健常女子大生を, 被験者とした。味覚感度の測定部位は, 舌の前2/3の茸状乳頭が散在し, 鼓索神経支配を受けている舌の7カ所とした。ついで, 舌の先端部中央における4基本味に対する味覚感度の測定を行った。甘味の味覚感度は, 卵胞期および黄体期が月経期および排卵期より上昇し, 酸味の味覚感度は, 黄体期が排卵期より低下した。しかし, 塩味および苦味の味覚感度は, 月経周期による変動は観察されなかった。これらのことから, 甘味は, 代謝リズムが急激に変わる月経および排卵期に味覚感度が低下するが, 基本4味すべてにおいて卵胞期と黄体期の間で変動がないことが示唆された。
著者
奥恒 行
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.337-342, 2005-12-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
12
被引用文献数
5 7

消化吸収されず, 血糖値も上昇させない糖質はエネルギー源にならず, 役に立たないものとして扱われていた。しかし, 著者らは難消化吸収性糖質の代謝に腸内細菌が重要な役割を演じていることを明らかにし, 難消化吸収性糖質の生体利用に発酵・吸収の概念を導入する必要のあることを提示した。難消化吸収性糖質が腸内細菌によって発酵を受けると, 短鎖脂肪酸, 炭酸ガス, 水素ガス, メタンガスなどが生成され, 菌体成分にも一部取り込まれる。これらのうち短鎖脂肪酸がエネルギー源として利用され, 約2kcal/gのエネルギーをもっていることを示した。また, 腸内細菌叢を改善して直接的・間接的に健康の保持・増進や疾病の予防などに関わっていることを示した。さらに, 難消化吸収性糖質は一度に大量摂取すると高浸透圧性の下痢を誘発するが, 消化されない糖質の最大無作用量はいずれも体重kgあたり0.3-0.4g程度であることを明らかにした。また, 最大無作用量は馴れや食べ方によって変動することを示した。
著者
若林 茂 里内 美津子 野上 義喜 大隈 一裕 松岡 瑛
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.471-478, 1991-12-19 (Released:2010-02-22)
参考文献数
29
被引用文献数
8 13

馬鈴薯デンプンを加熱分解して調製した難消化性デキストリン (PF: 食物繊維含有量58.2%, およびPF-C: 91.6%) の脂質代謝に及ぼす影響をラットを用いて検討し, 以下の成績を得た。(1) コレステロール無添加飼料で5週間飼育したラットの血清コレステロール (119±7.6mg/dl) およびトリグリセライド値 (218±39.0mg/dl) は, PF-C 10%摂取により, それぞれ有意な低下 (94.2±6.0および145土20.0mg/dl) を示した。(2) 市販固形飼料を給餌したラットに飲料水としてPF (20%水溶液) およびPF-C (5~20%水溶液) を5週間与えたとき, 血清および肝臓コレステロール値は有意に低下し, その程度は摂取したPFおよびPF-C水溶液の食物繊維含有量に依存していた。(3) そのときの糞便中への総胆汁酸排泄量は, PFおよびPF-C摂取群で有意な増加を示し, 同様に, (4) 盲腸内容物中の総短鎖脂肪酸量, とくにプロピオン酸量は有意に高値であった。また, (5) 体重, 血清総タンパク質, カルシウム, GOTおよびGPT活性は, PFおよびPF-C摂取によってなんら影響を受けなかった。さらに, (6) 飲料水交換法により, PF-C摂取の有無によって血清および肝臓コレステロール値は容易に変化することが確認された。
著者
金子 真紀子 三宅 正起
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.255-259, 2013 (Released:2013-10-21)
参考文献数
15

キュウリに含まれるギ酸の分布および味覚特性を明らかにするため, まず, HPLC法による分析法とキュウリ試料調製法について検討を行った。設定したHPLC分析法のギ酸定量限界は0.5 mg/Lであり, 再現性も良好であった。キュウリは, 果皮, 維管束, 果肉および種子, それぞれの部位に分け, HPLC分析試料を調製した。HPLC分析の結果, ギ酸は果肉と種子では検出されず, 果皮と維管束に局在することが示された。ギ酸標準水溶液の味覚特性を調べた結果, 低濃度 (<10 mg/L) では渋味を感じ, 濃度が高くなるに伴って渋味とともに苦味と酸味も強くなった。キュウリの渋味とギ酸濃度との関係については, 特に果皮を食したときに感じられる渋味は, ギ酸によるものと推察された。さらに, ギ酸を各種濃度に調整したキュウリの官能結果からも, ギ酸がキュウリの渋味の主な要因であることが示唆された。
著者
上西 一弘 江澤 郁子 梶本 雅俊 土屋 文安
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.259-266, 1998-10-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
19
被引用文献数
5 7

健康な成人女性9名を対象に出納法による食品および食品別のカルシウム吸収比較試験を行った。被験者にカルシウム約200mgを含む基本食を3日間摂取させた後, 基本食にカルシウム約400mgを含む添加食を加えた試験食を4日間摂取させた。添加食は牛乳, 小魚, 野菜の3種類のいずれかであり, 1月経周期以上の間隔をおいてランダムに摂取させた。試験期間中は毎日, 採尿, 採便を行い, 尿中, 便中および食事中のカルシウム量を測定し, カルシウム出納を算出した。また, 各試験開始時と試験食移行時, 試験終了時に採血を行い, 血清のカルシウム関連物質を測定した。その結果, カルシウム出納は基本食摂取時にはマイナスとなったが, 試験食摂取時にはプラスとなった。各食品および食品群別のカルシウム吸収率は牛乳39.8%, 小魚32.9%, 野菜19.2%となった。牛乳は, 乳糖およびCPPがカルシウム吸収を促進し, 野菜は, 食物繊維やシュウ酸が吸収を阻害していると考えられる。血清のカルシウム関連物質では, 血清カルシウム, 副甲状腺ホルモン, カルシトニンには試験期間中変化はみられなかったが, 1,25(OH)2D3は基本食摂取後に上昇がみられ, 試験食摂取後には元に戻っていた。これは低カルシウム食に対する反応と考えられる。
著者
山田 和彦 田中 弘之 石見 佳子 梅垣 敬三 井出 留美
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.91-99, 2017 (Released:2017-06-23)
参考文献数
20

食品の機能性に関する表示は, 消費者が食品を選択する際の一つの有効な手段となる。保健機能食品は, 食品表示法に基づく食品表示基準に規定されており, 特定保健用食品, 機能性表示食品および栄養機能食品からなる。特定保健用食品は, 健康増進法においても規定されており, 特定の保健の用途に適する旨を表示するもので, 販売に当たり国の許可が必要である。機能性表示食品は, 2015年に新しく創設された制度であり, 事業者の責任において体の構造と機能に関する機能性表示をすることができる。販売前に機能性と安全性に関する科学的根拠資料を国に届出る。栄養機能食品は, 規格基準型の食品で, 国の許可を受けることなく栄養素の機能表示をすることができる。2015年の特定保健用食品の市場規模は約6,400億円, 栄養機能食品といわゆる健康食品を合わせて1兆5千億円と試算されている。これらの食品の機能性に関する表示は消費者に正しく理解される必要があり, 普及・啓発が重要である。これにより, 人びとの健康の維持・増進が期待される。