著者
川島 春佳 木村 容子 伊藤 隆
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.359-365, 2018 (Released:2019-08-01)
参考文献数
21

アレルギー性鼻炎は,鼻粘膜のアレルギー性疾患であるが,様々な要因が増悪因子となる。今回,随証治療により用いた当帰芍薬散が奏功したアレルギー性鼻炎の4症例について報告する。症例1は31歳女性。冷え・月経不順に対して当帰芍薬散の内服を開始したところ,元々あった鼻炎症状が改善し,休薬により鼻炎症状が再燃した。症例2は40歳女性。子宮筋腫に対して内服していた桂枝茯苓丸加薏苡仁から当帰芍薬散に転方して,毎年認めていた花粉症状が軽快した。症例3は49歳女性。多種類の漢方薬を内服しても改善しなかった鼻炎症状が,当帰芍薬散に転方して速やかに消失した。症例4は65歳女性。葛根湯加川芎辛夷の内服後も残存した鼻炎症状に対し当帰芍薬散を併用して症状が改善した。古典では,当帰芍薬散の鼻炎に関する記載は見当たらないが,陰虚証で,水毒に加えて瘀血・血虚を認める鼻炎には,当帰芍薬散も鑑別処方の一つと考えられる。