- 著者
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平野 久
川崎 博史
- 出版者
- 横浜市立大学
- 雑誌
- 萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2006
本研究は、遺伝子組換え食品の安全性を評価するため、遺伝子組換え生物におけるタンパク質の変動を漏れなく解析することができるプロテオーム解析技術を確立することを目的とする。本年度は、質量分析装置によって定量的にディファレンシャルディスプレイ分析ができるiTRAQ法を用いて形質転換体で特異的に発現するタンパク質を効率的に検出できるかどうかを調べた。まず、ベニザケのI型成長ホルモン(GH)遺伝子をマイクロインジェクション法によってアマゴに導入し、体長が非形質転換体の約10倍になった形質転換体を得た。このGH遺伝子組換えアマゴのF1及びF2個体を作出し、外来GH遺伝子が生殖細胞に取り込まれた個体を育成した。このGH遺伝子組換えアマゴとその兄弟にあたる非組換え体のタンパク質組成の違いをiTRAQ法で調べた。iTRAQ法は、質量の異なるタグを含む試薬を異なる個体から抽出したタンパク質のプロテアーゼ消化物に別々に標識した後、各個体からの標識ペプチドを混合し、MS/MSモードの質量分析装置で分析する方法である。タグの質量スペクトルから異なる個体の特定のタンパク質の量比を、また、ペプチド部分のMS/MS解析によってアミノ酸配列を明らかにすることができる。そして、アミノ酸配列からデータベース検索によってタンパク質を同定することができる。iTRAQ法による分析の結果、形質転換体において転写・翻訳などのタンパク質合成に関わるタンパク質複合体やペントースリン酸経路の酵素群の発現が上昇していること、また、解糖系酵素群の発現が低下していることを確認することができた。iTRAQ法は、形質転換体におけるタンパク質発現の質的及び量的変動を容易に捉えることができる優れた方法であると考えられた。