著者
福田 淑一 月岡 一馬 川崎 史寛 松尾 吉郎 吉村 高尚
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.1697-1701, 1996-07-01
参考文献数
16
被引用文献数
37

門脈ガス血症(以下,本症)は予後不良の徴候である.我々は腹部CT像で本症が明瞭にとらえられた4例を経験し緊急開腹手術ですべて救命しえたので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は20歳から75歳の4例(男性1例,女性3例).そのうち2例は来院時重篤なショック状態であった.原疾患は壊死性腸炎,閉塞性大腸炎,絞扼性イレウスおよび非閉塞性腸管梗塞でいずれも腸管の壊死を伴っていた.2例が肝内門脈に,他の2例は腸間膜静脈内に本症が認められた.なお1例はpneumatosis cystoides intestinalisも伴っていた.いずれも緊急開腹で壊死腸管を全切除して救命しえた.本症は重篤な腸管壊死の存在を示唆しているゆえ,時期を逸せず開腹するべきである.また,本症の診断に腹部CT検査が極めて有用で,腸管壊死が疑われる急性腹症では本症の存在を念頭においてCTのウインドウ幅を調節し門脈内ガス像の描出に努力するべきである.