著者
荒川 隆一 川崎 英也
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.199-214, 2011 (Released:2011-05-02)
参考文献数
46
被引用文献数
2

マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-MS)や液体クロマトグラフィー大気圧化学イオン化質量分析法(LC-APCI-MS)を用いて,水系溶液におけるポリエチレンオキシド(PEO),ポリメタクリル酸メチル(PMMA),及びPEOとポリプロピレンオキシド(PPO)コポリマーの超音波分解の研究を行った.28 kHzホーン型の低周波超音波装置を用いてそれぞれの高分子を超音波分解し,その照射時間による分子量分布の変化及び分解物の末端構造を詳細に解析した.その結果,平均分子量が異なる2, 6, 20, 2000 kDaのEOに対して,最終的には末端基の異なる5種類のオリゴマー分解物(分子量約1000 Da)が生成し,それらの分解経路を推定した.単分散PMMAの超音波分解では,キャビテーションによるOH · やH · の生成によるラジカル(化学)反応に加えて,キャビテーションバブルの崩壊による力学(物理)的な切断が高分子鎖の中央付近で起こることが示唆された.PEO-block-PPOの超音波分解では,分解生成物の詳細な構造解析から結合の最初の切断は,PEOとPPO鎖の結合部付近の主鎖で起こることが分かった.更に,酸素が付加した分解物が検出され,ヘリウム中の熱分解生成物との比較からその酸素源は水又は溶存酸素の可能性が示唆された.PEO-block-PPOの超音波分解は,力学的な切断だけでなくラジカル反応も関与していることが示された.
著者
芳本 有史 西本 ゆかり 石原 千津子 川崎 英也 荒川 隆一
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.95-100, 2009-02-05

高速液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)を用いて分析を行う際に,様々な汚染物質のイオンが検出される場合がある.このことは,LC/MSの高精度な定性・定量分析を困難にする.汚染物質の混入を防ぐには,汚染物質の同定とそのイオンの出所を知っておく必要がある.今回,著者らはLC/MSで使用するバイアルとセプタム,そして濾過用膜フィルターに着目した.LC/MS及びMS^n分析により,幾つかの汚染物質を同定し,その原因を特定した.