著者
對馬 均 舘山 智格 川嶋 順蔵 片野 博
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.51-56, 1989-01-10
被引用文献数
1

人工股関節全置換術を目的として入院となったものの, 疼痛, ROM 制限, 筋力低下, 不良姿勢, などの機能的諸問題により手術施行が延期された慢性関節リウマチの一症例を経験した。この症例に対して7週間に渡り術前訓練を徹底して行った結果, 手術-術後訓練と良好に経過し, ADL 自立にて自宅退院させることができた。本症例に対する理学療法を通じて, 術前訓練の意義として, (1)術前に機能状態を高めておくことが, 術後の機能状態を大きく左右する, (2)術前から起居動作・移動動作を習熟させておくことによって, 術後早期離床・部分荷重歩行へのスムーズな移行が可能となる, (3)術前訓練の励行によって達成された身体的効果が, 手術や術後機能に関する心理的問題に好影響を及ぼす, (4)全人的理学療法という観点からも術前訓練は重要である, などの点を再確認した。