著者
菊池 麻美 中江 秀幸 對馬 均
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.647-650, 2011 (Released:2011-11-25)
参考文献数
8
被引用文献数
4 2

〔目的〕在宅などの狭い環境下での歩行評価法の条件を検討するための予備的研究として,健常成人における歩き始めから歩幅と歩行速度が一定となるまでの距離を確認することである.〔対象〕健常成人男性10名.〔方法〕10 mの歩行路を最大歩行速度で歩いた時の平均歩幅および速度,さらに,歩き始めから7歩目までの歩幅と歩行速度をビデオ画像により計測し,歩幅と歩行速度が一定となるまでに必要な距離を統計学的に分析した.〔結果〕1~7歩目間で歩幅は3歩目以降に,歩行速度は4歩目以降にそれぞれ一定となることがわかった.〔結語〕健常成人の速歩では,4歩目までの平均歩幅が3.27 mであったことから,歩幅や歩行速度が一定となるまでの助走距離の目安を3.5mとすることが妥当と思われる.
著者
中江 秀幸 對馬 均
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2007, pp.B0673-B0673, 2008

【目的】パーキンソン病患者(以下PD)では、その症状の進行や精神的緊張などにより一日の身体活動量が低下したり変動したりする。したがって、在宅PDの支援を展開するには、実際の生活場面での活動状況や生活構造を評価し、その経時的変化を的確に把握することが重要となる。そこで本研究では、在宅PDの24時間の身体活動を定量的かつ定性的に把握する方法として、三軸加速度計を用いた評価方法を開発し、その有効性を明らかにすることを目的とした。 <BR>【方法】対象は在宅PD7名とした。内訳は、平均年齢68.1±4.2歳、Hoehn&Yahrのstage(以下stage)II度3名・III度3名・IV度1名、FIMの得点は平均97.3±27.0点であった。身体活動の評価は、MicroStone社製三軸加速度計を腹部に固定し、x・y・z加速度から合成成分を算出し、時間で積分した24時間分の総力積(kgm/day)を身体活動の量的指標とした。同時にソリッドブレインズ社製"生活活動度計(A-MES)"を用い、1日の中で臥位・座位・立位・歩行の各姿勢動作が占める時間数、および姿勢変換回数と寝返り回数を測定し、身体活動の質的指標とした。 <BR>【結果】対象者の平均活動量は、総力積:1.67±0.64kgm/dayであった。各姿勢の占める平均時間数は、臥位:7.7±1.8時間、座位:10.4±3.0時間、立位3.6±1.9時間、歩行3.0±2.2時間と、座位が43.3%を占めていた。姿勢変換の総回数平均は786±326回、臥位-座位の変換では458±281回、座位-立位の変換では282±178回と、臥位-座位間の姿勢変換が約60%を占めていた。また、寝返り回数は62±77回であった。総力積と他の変数間では、stageとの相関は認められなかったものの、FIMとの間では有意な相関(r=0.707)を認めた。同様に、総力積と歩行時間との相関(r=0.905)は認められたが、他の姿勢時間や姿勢変換回数との間には相関を認めなかった。なお、立位時間と座位時間(r=-0.914)、臥位時間とstage(r=0.772)の間には相関が認められた。 <BR>【考察】我々が若年成人と一般高齢者を対象として行った先行研究の結果と比較すると、24時間の総力積値は若年成人で2.04±0.29kgm/day、一般高齢者で1.65±0.40kgm/dayであったことから、本研究のPDの総力積値は一般高齢者と同程度であった。対象者が7名と少なかったため、総力積とstageの関連性まで言及できなかったが、総力積と歩行時間並びにFIMとの間に相関が認められたことから、今回のような三軸加速度計と生活活動度計を用いて在宅PDの身体活動を量的・質的に評価することの可能性が示されたものと考える。<BR>
著者
對馬 均 舘山 智格 川嶋 順蔵 片野 博
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.51-56, 1989-01-10
被引用文献数
1

人工股関節全置換術を目的として入院となったものの, 疼痛, ROM 制限, 筋力低下, 不良姿勢, などの機能的諸問題により手術施行が延期された慢性関節リウマチの一症例を経験した。この症例に対して7週間に渡り術前訓練を徹底して行った結果, 手術-術後訓練と良好に経過し, ADL 自立にて自宅退院させることができた。本症例に対する理学療法を通じて, 術前訓練の意義として, (1)術前に機能状態を高めておくことが, 術後の機能状態を大きく左右する, (2)術前から起居動作・移動動作を習熟させておくことによって, 術後早期離床・部分荷重歩行へのスムーズな移行が可能となる, (3)術前訓練の励行によって達成された身体的効果が, 手術や術後機能に関する心理的問題に好影響を及ぼす, (4)全人的理学療法という観点からも術前訓練は重要である, などの点を再確認した。
著者
桜田 由紀子 對馬 均
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1456, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに】草取り作業は,農村部に居住する高齢者の生活時間の中で大きな割合を占めている。この草取り作業では,長時間に渡って前屈・しゃがみ姿勢をとるため,腰や膝関節など身体面への負担や悪影響が危惧される反面,屋外作業での爽快感や達成感,役割を果たした充実感等を得る心理・社会的な効果も期待される。このような草取り作業を,身体機能の低下している在宅高齢者が行なうことについて考える場合,理学療法士として身体的影響を考慮して作業中止を勧めるべきか,心理的効果を期待して継続を見守るべきか大いに迷うところであるが,今のところ,指導の拠りどころとなるような研究は見当たらない。本研究の目的は,地域在住高齢者の草取り作業について横断的に調査し,高齢者の草取り作業の実態を,活動内容・身体機能面・心理社会面から明らかにすることである。【方法】対象は草取り作業を行っている地域在住の女性高齢者で,通所リハビリテーションを利用する要介護・要支援者10名(平均年齢82.0±4.9歳,以下デイケア群),地域支援事業に参加する一般高齢者12名(平均80.9±4.0歳,以下地域支援群),地域の老人クラブに所属する活動的な元気高齢者10名(平均年齢75.2±3.9歳,以下老人クラブ群)とした。日常生活における介助の有無,歩行補助具等の使用については問わないものとしたが,要介護認定を受けていたのはデイケア群の10名のみで(要介護2が1名,1が4名,要支援2が3名,1が2名),このうち9名が移動に歩行補助具を使用していた。調査項目は,①一般的情報(家屋状況,同居家族状況等),②草取り作業実態調査(頻度,時間,草取り作業時の痛み発生経験),③膝・腰の状態(VASによる自覚的疼痛評価,整形外科疾患,骨折歴等),④身体計測(身長,体重,膝関節可動域,両膝顆間距離,両果間距離,円背度,骨密度)とした。統計処理にはSPSS 13.0Jを使用し有意水準を5%として解析を行なった。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,演者が所属する大学院の倫理委員会の承認を受けた上,対象に研究の趣旨を文書ならびに口頭で説明し,研究への参加について書面にて承諾・同意を得た。【結果】家屋環境では全員が一軒家の持ち家に居住し,庭,畑あるいはその両方を所有していた。同居家族のいない独居者はデイケア群4名,地域支援群1名,老人クラブ群2名であった。同居家族がいても自分以外に草取りをする人がいないと答えた者はデイケア群3名,地域支援群8名,老人クラブ群6名であった。1回あたりの草取り作業時間の全体平均は3.0±1.0時間,1週間の作業日数の全体平均は3.0±1.5日であった。3群間の比較では,作業時間・日数のいずれも老人クラブ群で低い傾向がみられた。草取りとからだの痛みに関する質問では,草取りで腰や膝が痛くなったことが「何度もある」と答えた者はデイケア群7名,地域支援群9名,老人クラブ群4名であった。疼痛発生回数により0~3回群と「何度もある」群に分けて比較したところ,作業時間,日数とも有意差を認めなかった。骨密度を若年成人平均値に対する割合でみると,デイケア群(平均56.0±14.7%),地域支援群(平均67.4±10.9%)より老人クラブ群(平均79.1±12.8%)の方が有意に高かった。両膝顆間距離についてはデイケア群が他の2群より有意に大きく,膝関節伸展制限については地域支援群が他の2群より有意に大きかった。また全対象を両膝顆間距離の平均以上群と未満群とで比較したところ,平均以上群では未満群に比較して年齢および作業日数(ともにp<0.05),作業時間のいずれも高い傾向を認めた。【考察】在宅高齢者を身体機能や活動性の違いから3つの群にわけて草取り作業実態を調査した。3群間の比較において,デイケア群では歩行補助具使用者が多く,骨密度が低下し,膝の変形が進んでいるにも関わらず,草取りの時間・日数とも他群と有意差がなかった。加齢とともに身体機能が衰えた高齢者も行っている作業であるということが明示された。また,草取りが原因での腰痛・膝痛の発生回数が多くても作業時間,日数に有意差が見られなかったことから,痛みが緩和すれば疼痛発生以前と同様の作業を行っている高齢者が多いと考える。一方,両膝顆間距離が大きい者ほど,草取りに費やす作業時間が長く日数が多い傾向が認められた。これは,頻回で長時間の草取りが膝の変形に影響を及ぼしている可能性を示唆する。以上のことから,身体機能が衰えた高齢者の草取りに対しては痛みの発生等に伴って作業時間,頻度を減少させていくような指導が必要と考える。【理学療法研究としての意義】本研究は理学療法士が,高齢者の草取り作業実態を把握しその身体的影響を知る意味で有意義と思われる。