著者
川村 三希子
出版者
一般社団法人 日本がん看護学会
雑誌
日本がん看護学会誌 (ISSN:09146423)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.13-21, 2005 (Released:2017-02-01)
参考文献数
10
被引用文献数
3

要 旨本研究の目的は,長期生存を続けるがんサバイバーは,どのように生きる意味を見いだしているのか,そのプロセスを明らかにすることである.生きる意味を見いだすことは,スピリチュアルなニーズの一部として位置づけた.研究方法はグラウンデッド・セオリー・アプローチ法を用いた.対象者は,病名を知っているがん患者7名であった.データの収集は,半構成的面接と参加観察を行った.分析の結果,生きる意味を見いだすプロセスは,がんの罹患によって《生きられる時間に対する認識》が変化し,それに沿って《自分の存在価値の模索》が繰り返し行われるプロセスであった.《自分の存在価値の模索》のプロセスには〈存在価値の模索動因の段階〉〈存在価値を試す段階〉〈存在価値を確かめる段階〉という3つの段階があった.さまざまな現実に直面する中で《自分の存在価値の模索》は繰り返し行われていた.がんサバイバーは,がんという病いによって,生きられる時間が不確かになり,自分自身の存在価値も揺さぶられた.その中で,自己の内面に向き合いながら,新たな自分の存在価値を模索し,自分の存在価値を人とのつながりを通して確かめられた時,生きる意味を見いだしていた.がんの生存率が向上し今後ますます生存期間の長期化が予想される.長期間にわたりがんを抱えながら生活するがんサバイバーを継続的に支援していくことの重要性が示唆された.