著者
川村 昌司
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.2519-2529, 2018 (Released:2018-12-20)
参考文献数
14

Helicobacter pylori(H. pylori)感染は胃癌などの疾患リスクと関連しており,内視鏡観察時にはH. pylori感染状態に合わせた好発疾患・好発部位に注意する必要がある.内視鏡によるH. pylori感染診断は未感染・現感染・除菌後(自然除菌含む)の3つの状態に特徴的な胃粘膜所見を用いて行い,その局在と頻度は“胃炎の京都分類”にまとめられている.H. pylori未感染の診断は胃角までのRAC(regular arrangement of collecting venules)が有用であり,現感染診断はびまん性発赤・内視鏡的萎縮,除菌後診断には地図状発赤などの所見を用いて診断する.一方,内視鏡による感染診断の注意点として,PPI(proton pump inhibitor)などの薬剤により未感染例でもRACが不明瞭化すること,現感染例・除菌後例でも体部の集合細静脈がみられる例があること,びまん性発赤の判定が難しい例があることなどが挙げられる.内視鏡的なH. pylori感染診断は一つの所見にとらわれずに総合的に判断する必要がある.また,H. pylori感染診断のみに注視しすぎて内視鏡本来の目的である病変発見を忘れないように,バランスのとれた内視鏡観察を行う必要がある.