著者
川村 沙紀
出版者
法政大学地理学会
雑誌
法政地理 = 法政地理 (ISSN:09125728)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.43-50, 2017-03-17

冬季の日本海側地域に多くの降水をもたらす天気の原因として,日本海上に発現する帯状雲が挙げられる.冬季降水と海面水温に関連する研究,ならびに帯状雲の研究は,各気象要素を含めながら総合的に行われてきている.内田(1979,1982)は, 850hPa 面付近に帯状雲が生じ,帯状雲の円弧部分の到達地域で降水が多いことを示唆している.本研究では,帯状雲発生時の日本海沿岸部の降水分布,ならびに対象地点の降水量と海・気温差の相関を吟味した.本研究で得られた結果は以下の通りである.①.帯状雲の発現位置によって,雲パターンⅠと雲パターンⅡに分類できた.雲パターンⅠでは対象地域全体で降水が発現し,とりわけ多降水を記録している領域は日本海寒帯気団収束帯が形成されている位置と合致する.しかもこの場合,この収束帯の南西端の方でより多くの降水がもたらされているため,対馬暖流が影響していると推察される.一方,雲パターンⅡは前者とは異なり,無降水の地域が存在している.これは従来の冬型降水で言及されていた降水分布パターンに近似していると言える.②.降水量と海・気温差の相関に関しては,多降水であった地域で相関が高く,特に,より相関の高い鳥取付近の地域については,冬季でも対馬海流の北上する海域に相当しているので,やはりこの点からもその影響が伺われる.