著者
小山 伸樹
出版者
法政大学地理学会
雑誌
法政地理 (ISSN:09125728)
巻号頁・発行日
no.46, pp.39-42, 2014-03
著者
趙 宇
出版者
法政大学地理学会
雑誌
法政地理 = JOURNAL of THE GEOGRAPHICAL SOCIETY OF HOSEI UNIVERSITY (ISSN:09125728)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.61-82, 2020-03-20

纏足とは女性の足の指を幼児期から足の裏に曲げて布で固く縛り成長させない慣習のことをいう。中国で纏足は,宋代から始まり,明清時代には女性の理想像とされ,20世紀初期に農村地域の庶民にまで広がった。民国時代の纏足禁止令と中華人民共和国成立後の社会変化によって,纏足は徐々に廃れていったが,雲南省通海県の村落社会では,取り締まりから逃れ,纏足を行おうとしていた家が多かった。筆者は通海県六一村と長河村で,計8名の民国生まれの纏足女性に対し,聞き取り調査を行うことができた。纏足に関してはすでに数々の研究が蓄積されているが,古代から近代の民国時代までの歴史研究が圧倒的に多く,毛沢東時代および改革開放以後の纏足女性の生活についてはほとんど調査報告がなされていない。本稿では,民国時代以後,とりわけ現代の纏足女性の社会生活に焦点をあて,家庭内外の労働,地域文化への参与および貢献,老後の新しいライフスタイルといった三つの側面から,近現代の中国社会における纏足女性の生活の変化を検討したい。本稿は,地域社会の纏足女性の社会生活について,近現代の中国社会における通時的な変化という新しい視点から考察を行い,家庭内外の経済活動ばかりでなく,地域の民俗文化にも纏足女性が主体的に役割を果たしていたことを新たに提示した。また,毛沢東時代と改革開放後の通海県六一村と長河村における纏足女性の実態を記録することができたことにも本研究の意義や価値があると思われる。
著者
百瀬 友哉
出版者
法政大学地理学会
雑誌
法政地理 (ISSN:09125728)
巻号頁・発行日
no.53, pp.13-25, 2021-03

近年,首都圏の鉄道では,「慢性遅延」が大きな問題となっている。鉄道の遅延は慢性遅延と,突発的遅延に分類され,アンケートなどの結果から,慢性遅延は首都圏独自の問題であると明らかにした。それに伴い,首都圏のJRや大手私鉄では様々な対策を講じている。また,近年ではJR総武緩行線にて最も慢性遅延が発生している。本論では,JR総武緩行線の平井~浅草橋間にて統計をとり,関係者への聞き取り調査と,目視による調査を行った。その結果,「停車遅延」が大きな問題になっていることがわかった。そこで,秋葉原駅において追加調査を行い,その停車遅延が次々に隣の駅に伝搬していくことを明らかにした。
著者
松尾 和弥
出版者
法政大学地理学会
雑誌
法政地理 = JOURNAL of THE GEOGRAPHICAL SOCIETY OF HOSEI UNIVERSITY (ISSN:09125728)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.61-73, 2021-03-20

本研究では,着床式洋上風力発電における事業者と漁業者との協調について,銚子地域を対象に検討した.国土交通省,東京電力ホールディングス,銚子市漁業協同組合へのインタビュー調査と,銚子の漁業者や漁業協同組合職員へのアンケート調査を行った.先行研究より,事業者と漁業者のコミュニケーションや情報交換,コミュニケーションを円滑に行うための役割を果たす存在が重要となる.調査より,洋上風力発電に関し,銚子地域の活性化や漁獲量増加の期待があるが,漁獲量の減少やそれ以外の不利益の他,とくに,底引網漁でヒラメやタイを獲っている者が,区域付近で漁業ができなくなること,底引網が施設に引っ掛かり網が破れることや施設を傷つけること,漁船の破損や転覆の危険があることに懸念を示していることが分かった.どうすれば安全に操業できるのかを,事業者は漁業者に情報提供を行っていく必要がある.
著者
長岡 亮介
出版者
法政大学地理学会
雑誌
法政地理 = JOURNAL of THE GEOGRAPHICAL SOCIETY OF HOSEI UNIVERSITY (ISSN:09125728)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.47-58, 2013-03-21

本稿では,鉄道会社の関連事業について,これまでの空間的展開と戦略性を明らかにする.私鉄企業の不動産事業が中心であった先行研究とは異なり,国鉄時代を含めたJR東日本グループの商業施設(駅ビル・駅ナカ事業)を対象とした国鉄時代~現在に至る駅ビル・駅ナカの開発は,当時の法律・社会情勢の違いにより,時期区分ごとの内容が大きく異なるこのような背景のもとJR東日本は,国鉄から引き継いだ優良な資産と豊富な資金力を活用し,各駅に見合った開発を進めてきた.その結果,バブル経済崩壊やリーマンショックにより苦戦している他の商業施設と対照的に,順調に収益を上げることに成功した.しかし今後は,更なる利用客の減少に備えて,まちづくりやバリアフリーの観点を取り入れた新たな事業展開が必要とされている.
著者
川村 沙紀
出版者
法政大学地理学会
雑誌
法政地理 = 法政地理 (ISSN:09125728)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.43-50, 2017-03-17

冬季の日本海側地域に多くの降水をもたらす天気の原因として,日本海上に発現する帯状雲が挙げられる.冬季降水と海面水温に関連する研究,ならびに帯状雲の研究は,各気象要素を含めながら総合的に行われてきている.内田(1979,1982)は, 850hPa 面付近に帯状雲が生じ,帯状雲の円弧部分の到達地域で降水が多いことを示唆している.本研究では,帯状雲発生時の日本海沿岸部の降水分布,ならびに対象地点の降水量と海・気温差の相関を吟味した.本研究で得られた結果は以下の通りである.①.帯状雲の発現位置によって,雲パターンⅠと雲パターンⅡに分類できた.雲パターンⅠでは対象地域全体で降水が発現し,とりわけ多降水を記録している領域は日本海寒帯気団収束帯が形成されている位置と合致する.しかもこの場合,この収束帯の南西端の方でより多くの降水がもたらされているため,対馬暖流が影響していると推察される.一方,雲パターンⅡは前者とは異なり,無降水の地域が存在している.これは従来の冬型降水で言及されていた降水分布パターンに近似していると言える.②.降水量と海・気温差の相関に関しては,多降水であった地域で相関が高く,特に,より相関の高い鳥取付近の地域については,冬季でも対馬海流の北上する海域に相当しているので,やはりこの点からもその影響が伺われる.
著者
細田 浩 山下 脩二 山本 隆太
出版者
法政大学地理学会
雑誌
法政地理 (ISSN:09125728)
巻号頁・発行日
no.48, pp.33-46, 2016-03

A.v.フンボルトの著書及びフンボルトに関する評論について検討し, 現代の地理学ないし科学におけるフンボルトの業績と, その意味を検討する. 取り上げた文献は「フンボルト自然の諸相」「新大陸赤道地方紀行」「経験論と地理学の思想」「コスモス」である. 考察した結果,フンボルトは近代科学の黎明期にあって, 天文学・地理学・植物学・岩石学・地球科学・社会学などさまざまな分野の緒を開いていること,そして経験論を経て最終的には宇宙全体の調和のある全体像の法則を探っていたと考えられる. 現代の総合的な生態系としての地球観からフンボルトの価値を再認識すべきであろうと考える.