著者
川村 義治
出版者
日本教育メディア学会
雑誌
教育メディア研究 (ISSN:13409352)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.31-41, 2006

この論文では,イメージは描写的な側面と記述的な側面が一体になった心的表象であるという観点から,英単語の記憶保持における身振りの運動イメージの役割に関して論述した。最初に,イメージとは何かを議論したイメージ論争とイメージの役割を評価した二重符号化理論を再考して,新たなイメージ観とイメージと記憶をめぐる本稿の理論的枠組みを示した。次に,身振りの運動イメージを非言語情報として用いた筆者の二つの実験結果を報告して,身振りの運動イメージが英単語の記憶保持に効果があることを確認した。さらに,人間は外部世界での身体的な経験から抽出したイメージ・スキーマに基づいて外部世界を意味づけるという認知言語学の見解を検討した。もし言語と身振りイメージの概念構造が同じスキーマによって動機づけられているならば,単語の概念を身振りの動作イメージで捉えることで,単語の記憶保持が高まるという結論に至った。