著者
川浦 義広
出版者
尚美学園大学
雑誌
尚美学園大学芸術情報研究 (ISSN:18825370)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.41-62, 2016-03-31

ジェルジ・リゲティ (1923-2006) は、 20世紀後半を代表するハンガリーの作曲家である。 彼の音楽は 「音響の変化のプロセス」 を音楽の時間構造と結びつけたという点で非常に独創的であり、 1960年代には「ミクロポリフォニー」という語法を確立した。 その後一貫して音響空間や時間構造への試みを行うが、 1980年代以降になると和声的な書法や旋法を用いた書法など過去の時代の音楽にみられた書法に回帰する。 また、 同時にミニマリズムの影響からポリリズムやポリテンポなどの多層的かつ複雑なリズム書法を用いるようになる。 本論文では、 リゲティの作風の変遷を考察することによってリゲティの音楽的関心やそれに伴う作曲語法の変遷を明らかにし、晩年に書かれた作品である 「ヴァイオリン協奏曲」の分析を通して和声的な書法や過去の書法が彼の音楽においてどのような効果を持っているのかを考察する。 また、このような考察は、過去の音楽書法と現代作品の書法の関連性について検証することにもなるといえる。