著者
中川 岳 川田 裕貴 追川 修一
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2016-OS-136, no.15, pp.1-6, 2016-02-22

プログラムの実行単位であるプロセスは,CPU 時間,メインメモリといった種々のリソースを消費する.その中でも,利用可能なメインメモリ量はシステムの安定性に与える影響が大きい.そのため,ユーザは大量にメインメモリを使用するプロセスを把握し,必要に応じてリソース制限を行うなどして,利用可能なメインメモリを一定以上に保つことが望ましい.しかしながら,プロセスはときにユーザの意図しない,大量かつ急速なメモリ消費を行う.既存のオペレーティングシステム (OS) のリソース管理機構では,このような大量のメモリ消費によるシステムの不安定化を未然に防ぐことは難しい.システムでメモリリソースの枯渇が起こった場合に,動作中のプロセスを停止することによって,利用可能なメモリ量を確保するメモリ管理戦略も存在する.しかしながら,この戦略には,不安定化の原因ではないプロセスを誤って停止する問題もある.そこで本発表では,プロセスのメモリ消費のふるまいに基づいた,プロセスのリソース管理を提案する.この提案手法では,プロセスのメインメモリ消費の速度に着目し,問題のあるメモリ消費の予兆を検出する.問題のあるメモリ利用を行ったプロセスについては,スケジューリングから一時除外し,それ以上のシステムの不安定化を防止する.この手法を用いれば,これまで対処が難しかった,ユーザが意図しない,大量かつ急速なメモリ消費を検出することができる.また,その問題のあるメモリ消費に伴うシステムの不安定化を未然に防止することができる.本発表では,その提案手法の設計について議論する.