著者
徳田 英幸 追川 修一 西尾 信彦 萩野 達也 斎藤 信男
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第53回, no.アーキテクチャサイエンス, pp.39-40, 1996-09-04

慶應義塾大学環境情報学部における次世代マイクロカーネル研究プロジェクト(MKngプロジェクト)は,1996年から参加企業10社, 3大学とともにスタートした.本プロジェクトは,慶應義塾大学が中心となって開発している分散実時間マイクロカーネル技術,および,IPA開放型基盤ソフトウェア研究開発評価事業「マルチメディア統合環境基盤ソフトウェア」プロジェクトで開発したマルチメディア拡張機能を踏まえ,分散/並列システム,マルチコンピュータシステム,組込みシステム,高速ネットワークシステムやモーバイルシステムに応用するための基盤ソフトウエアとしての次世代マイクロカーネル技術の研究開発,評価,普及拡大を目的としている.また,特に単一プロセッサアーキテクチャだけに依存せず,アプリケーション,ハードウェア,ネットワーク構成など個々のシステム特性に対して,動的に適応可能なカーネルアーキテクチャを研究し,マイクロカーネルによりモーバイルシステムからスケーラブルな並列システムまでを統合した分散コンピューティング環境を実現することが目的である.本論文では,MKngプロジェクトの目的およびプロジェクトの概要について解説する・
著者
石川 広男 追川 修一
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2017-OS-141, no.24, pp.1-6, 2017-07-19

本稿では,Linux の Open Channel SSD 実装である LightNVM を使って,IoT 向け大容量小型コンピュータ Olive に搭載された SSD を管理する実装を試作し,その効果や課題を示す.Open Channel SSD は,SSD の構成方法の一つである.その特徴は,従来であれば SSD のコントローラ内部に実装されていた Flash Translation Layer (FTL) によって隠蔽されている NAND フラッシュメモリのチャンネルへのアクセスを,ホストの OS に公開するというところにある.これによって NAND のチャネルに対するホストアクセスの並列度を向上し,ホストのアプリケーションのワークロードに応じた処理を可能にする.Olive を使った実験では,デバイスの並列度を変更することによって入出力性能も変化することが確かめられた.
著者
中川 岳 川田 裕貴 追川 修一
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:21888795)
巻号頁・発行日
vol.2016-OS-136, no.15, pp.1-6, 2016-02-22

プログラムの実行単位であるプロセスは,CPU 時間,メインメモリといった種々のリソースを消費する.その中でも,利用可能なメインメモリ量はシステムの安定性に与える影響が大きい.そのため,ユーザは大量にメインメモリを使用するプロセスを把握し,必要に応じてリソース制限を行うなどして,利用可能なメインメモリを一定以上に保つことが望ましい.しかしながら,プロセスはときにユーザの意図しない,大量かつ急速なメモリ消費を行う.既存のオペレーティングシステム (OS) のリソース管理機構では,このような大量のメモリ消費によるシステムの不安定化を未然に防ぐことは難しい.システムでメモリリソースの枯渇が起こった場合に,動作中のプロセスを停止することによって,利用可能なメモリ量を確保するメモリ管理戦略も存在する.しかしながら,この戦略には,不安定化の原因ではないプロセスを誤って停止する問題もある.そこで本発表では,プロセスのメモリ消費のふるまいに基づいた,プロセスのリソース管理を提案する.この提案手法では,プロセスのメインメモリ消費の速度に着目し,問題のあるメモリ消費の予兆を検出する.問題のあるメモリ利用を行ったプロセスについては,スケジューリングから一時除外し,それ以上のシステムの不安定化を防止する.この手法を用いれば,これまで対処が難しかった,ユーザが意図しない,大量かつ急速なメモリ消費を検出することができる.また,その問題のあるメモリ消費に伴うシステムの不安定化を未然に防止することができる.本発表では,その提案手法の設計について議論する.
著者
追川 修一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.1-11, 2015-03-26

計算機が高性能化し,またクラウドコンピューティングが普及するにともない,オペレーティングシステム(OS)が仮想化環境で使われることが多くなっている.仮想化環境では,仮想マシン(VM)がOSを実行する.VMは仮想化環境が定義するものであるが,実機上で動作するOSをそのまま実行できる実機に相当するVM,そしてOSとVMが連携することで処理を軽量化するVMが,これまで提供されてきた.しかしながら,OSの構造,およびVMがOSに提供するインタフェースは,実機上で動作するOSのものから大きく変更されることはなかった.本論文では,VMが実行するOSの軽量化を目的とし,VMがOSに提供するインタフェースを変更するかたちでのストレージ仮想化手法について述べる.提案手法を,LinuxをホストOSとして用いるKVMに実装した.実験結果から,従来手法と比較して,提案手法はアクセスを高速化できることが分かった.As the performance of computing platforms becomes higher and cloud computing becomes popular, it is common to execute operating systems (OSes) on virtualized environments. Such virtualized environments employ a virtual machine (VM) to execute an OS. While VMs can be defined by virtualized environments, they are defined to be the same as or similar to real hardware; thus, their interface to OSes also remain mostly unchanged. This paper describes a storage virtualization method that changes the VM's storage interface in order to make guest OSes lightweight. We implemented the proposed method in KVM, which utilizes Linux as its host OS. The evaluation results show that the method can improve the data access by comparing with the existing method.
著者
中川 岳 追川 修一
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.7, no.5, pp.13-13, 2014-12-05

次世代の不揮発性メモリはバイトアクセス可能であり,計算機の主記憶として 利用可能である.主記憶が不揮発になることで,主記憶と2次記憶を融合することが可能になる.これにより,CPUから永続的なデータに直接アクセスが可能になり,I/Oのオーバヘッドを削減することができる.しかしながら,現時点では単体で主記憶を構成可能なNVMは登場していない.そのため,これまで,少量のDRAMと相変化メモリ(PCM)を組み合わせて主記憶を構成する方法が検討されてきた.PCMは 書き込みに短所のある不揮発性メモリ素子である.DRAMと組み合わせ,書き込みアクセスの多いデータをDRAMに配置することで,PCMの短所を隠蔽して主記憶を構成することができる.このようなハイブリッド構成では,データに対 する書き込みの傾向に基づいて,データ配置を決定する必要がある.この方法として著者らはデータの持つセマンティクスを利用して,プログラミング言語処理系のレベルでデータ配置の決定を行う方法の提案と実装を行った.実験の結果,提案手法はハイブリッド構成の主記憶における効率的なデータ配置に効果があることが分かった.しかしながらその一方で,提案手法には配置の効率面での問題がある.本発表では,その解決のための修正と効果の検証結果について説明する.
著者
追川 修一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1153-1164, 2013-03-15

近年,不揮発性のnon-volatile(NV)メモリの性能向上が著しく,高速化,大容量化,低価格化が進んでいることから,それらをメインメモリとして用いる研究,またストレージデバイスとして用いる研究が,それぞれ別個に行われてきた.しかしながら,メインメモリおよびストレージの両方としても用いることのできるNVメモリは,その両方を融合できることを意味する.融合により,メインメモリとして使用できるメモリ領域が増加し,これまでメインメモリ容量を超えてメモリ割当て要求があった場合に発生していたページスワップが不要になることで,システムの処理性能が向上する.本論文はLinuxを対象とし,NVメモリから構成されるメインメモリとファイルシステムの具体的な融合方法を提案する.そして,Linuxをエミュレータ上で実行する評価実験を行い,融合が可能であること,また性能面でも有効であることを示す.
著者
斎藤 奨悟 追川 修一
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2012-OS-120, no.1, pp.1-8, 2012-02-21

近年,アプリケーションの動作を高速化するため,プロセッサが SIMD(Single Instruction Multiple Data) ユニットを搭載することが一般的となっている.SIMD ユニットは,動画像など,大きなデータ処理の高速化に用いられるが,システムソフトウェアで利用されることは想定されていない.しかし,OS(Operating System) カーネルは多くのデータを扱う特徴を持つため,SIMD ユニットを活用することで高速化を図る事が出来る箇所があると考えられる.本研究では、システムソフトウェアにおける SIMD ユニットを活用するための考察および,検証を行った.また,実際の適用例として,OS カーネルにおけるデータコピーにまつわる処理の高速化を確認した.
著者
中川 岳 追川 修一
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-18, 2017-05-25

Denial-of-Service攻撃(DoS攻撃)からWebアプリケーションを防衛する手法としては,Web Application Firewall(WAF)を用いる方法,OSのリソース制限機構を用いる方法,クライアントからのリクエスト傾向からDoS攻撃の可能性を判定する方法などさまざまな方法が提案されてきた.しかしながら,それらの方法は,Webアプリケーションの脆弱性を利用して,大量のリソースを消費させるDoS攻撃には十分に対処できない.そこで本論文では,WebアプリケーションのDoS攻撃の防御手法として,プロセスのメモリ消費の傾向を利用したリソース制限を提案する.DoS攻撃の原因となるリクエストを受け取ると,そのリクエストを処理するプロセスは急速に大量のリソースを消費する.提案手法では,このリソースの急速な消費を検出し,そのプロセスに対してリソースの利用制限を行う.これにより,DoS攻撃によるリソース浪費を抑制し,正常なリクエストの処理性能の低下を防止する.提案に基づいて,メモリ消費の傾向に基づいたDoS攻撃への対策機構を設計,実装し,評価実験を行った.結果として,DoS攻撃下にあるWebアプリケーションのリクエスト処理性能を最大で4.3倍に改善することができた.また,提案手法による,Webアプリケーションのリクエスト処理性能の性能低下は,最大でも5.0%程度と,非常に小さいことも確認できた.
著者
追川 修一
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2009, no.14, pp.1-8, 2009-04-15

信頼性やセキュリティ向上のためには,オペレーティングシステム(OS)カーネルの内部状態をカーネル外部から別のソフトウェアにより監視することが有効である.単一システム内でそのような監視を行うためには,監視対象となるOSと監視ソフトウェアを実行するOSからなる,複数OSの共存環境が必要となる.OS共存環境は,本来OSで行うべき処理を阻害しないように,できるだけ軽量であることが望ましい.本論文では,OS共存環境におけるカーネル間の隔離機能の有無による性能差について調査するため,IA-32システム上でOS共存環境を実装し,実験を行った結果について述べる.実験結果から,カーネル間の隔離機能の有無による性能差は大きいこと,また性能差はCPUによって変化することがわかった.Monitoring the internal conditions of the operating system (OS) kernel is an effective technique to improve reliability and security. It requires the colocation of two OSes running on a single system, a monitored one and the other that executes monitoring software. Enabling such colocation should be lightweight in order not to disturb the execution of the monitored OS. We implemented the OS colocation software layers with and without the OS isolation mechanism on IA-32 systems. This paper investigates the performance impact imposed by OS isolation at the OS colocation software layers.
著者
斎藤 奨悟 追川 修一
雑誌
研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS)
巻号頁・発行日
vol.2012, no.1, pp.1-8, 2012-02-21

近年,アプリケーションの動作を高速化するため,プロセッサが SIMD(Single Instruction Multiple Data) ユニットを搭載することが一般的となっている.SIMD ユニットは,動画像など,大きなデータ処理の高速化に用いられるが,システムソフトウェアで利用されることは想定されていない.しかし,OS(Operating System) カーネルは多くのデータを扱う特徴を持つため,SIMD ユニットを活用することで高速化を図る事が出来る箇所があると考えられる.本研究では、システムソフトウェアにおける SIMD ユニットを活用するための考察および,検証を行った.また,実際の適用例として,OS カーネルにおけるデータコピーにまつわる処理の高速化を確認した.Nowadays, it is very common that a processor includes a SIMD (Single Instruction Multiple Data) unit in order to accelerate application processing. While a SIMD unit is a part of a processor, it evolves more rapidly than the integer unit of the processor. Since the use of an FPU (Floating Point Unit) and a SIMD unit is basically abandoned from the kernel, there can be places inside the kernel where a SMID unit works effectively to deal with a large amount of data processing. This paper describes our preliminary work to explore the possibility to utilize a SIMD unit in the kernel. We performed preliminary experiments by using UML (User Mode Linux) and show that data copying can be improved.
著者
追川 修一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.1153-1164, 2013-03-15

近年,不揮発性のnon-volatile(NV)メモリの性能向上が著しく,高速化,大容量化,低価格化が進んでいることから,それらをメインメモリとして用いる研究,またストレージデバイスとして用いる研究が,それぞれ別個に行われてきた.しかしながら,メインメモリおよびストレージの両方としても用いることのできるNVメモリは,その両方を融合できることを意味する.融合により,メインメモリとして使用できるメモリ領域が増加し,これまでメインメモリ容量を超えてメモリ割当て要求があった場合に発生していたページスワップが不要になることで,システムの処理性能が向上する.本論文はLinuxを対象とし,NVメモリから構成されるメインメモリとファイルシステムの具体的な融合方法を提案する.そして,Linuxをエミュレータ上で実行する評価実験を行い,融合が可能であること,また性能面でも有効であることを示す.Recent advances of non-volatile (NV) memory technologies make significant improvements on its performance including faster access speed, larger capacity, and cheaper costs. While the active researches on its use for main memory or storage devices have been stimulated by such improvements, they were conducted independently. The fact that NV memory can be used for both main memory and storage devices means that they can be unified. The unification of main memory and a file system based on NV memory enables the improvement of system performance because paging becomes unnecessary. This paper proposes a method of such unification and its implementation for the Linux kernel. The evaluation results performed by executing Linux on a system emulator shows the feasibility of the proposed unification method.
著者
追川 修一
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は,組み込みプロセッサ向け仮想化環境の研究,および異なるプロセッサアーキテクチャを持つプロセッサの相互接続手法の研究の2点を研究の目的とした.研究成果として,組み込みシステムで広く使用されているARMプロセッサをターゲットとする仮想化ソフトウェアの開発手法を明らかにし,また実際に実装することで手法の正しさを検証した.また,OpenCLを拡張したHybrid OpenCLにより,効率的に複数のプロセッサを相互接続できることを明らかにした.
著者
伊藤愛 追川 修一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告システムソフトウェアとオペレーティング・システム(OS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.36, pp.47-54, 2007-04-05

近年、マルチコアプロセッサを搭載したマシンは一般化しつつある。組み込みシステムにおいても、マルチコアプロセッサを搭載したシステムが増加している。このようなシステムで VMM を動作させることによって、資源の効率利用、安全性の向上、信頼性の向上を実現することができる。これまで、マルチコアプロセッサ指向の軽量 VMM として、Gandalf を設計、実装してきた。本論文では、ゲスト OS 間のメモリ保護を実現するシャドウページングについて述べる。シャドウページングを利用することで、VMM がゲスト OS のメモリ利用を監視することができる。2方式のシャドウページングを設計し、実装を行った。それぞれの方式について評価実験を行い、シャドウページングの有無や方式の違いによるコスト差を比較し、考察を行う。Recently, the use of multi-core processors is increasing. Many multi-core processors are employed by embedded systems. By using VMMs in embedded systems with multi-core processors, we can effectively utilize the resources, improve safety and reliability. We designed and implemented a multi-core processor-oriented lightweight VMM, Gandalf. This paper focuses on shadow paging, which enables memory protection among guest OSes. A VMM can monitor the use of memory by guest OSes through shadow paging. We designed and implemented the two models of shadow paging. We compare and discuss the costs between these models by the results from benchmark experiments.
著者
伊藤愛 追川 修一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌コンピューティングシステム(ACS) (ISSN:18827829)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.98-112, 2008-03-15
被引用文献数
1

これからの組み込みシステムでは,ユーザの選択したアプリケーションを動作させるとともに,安全で効率の良い実行環境を実現する必要がある.その解決策として,VMM は有効な手段である.組み込みシステムでVMM を動作させることによって,資源の効率利用,安全性の向上,信頼性の向上を実現することができる.そのため,マルチコアCPU 指向の軽量VMM として,Gandalf を設計,実装してきた.本論文では,ゲストOS 間のメモリ保護を実現するシャドウページングについて述べる.シャドウページングを利用することで,VMM がゲストOS のメモリ利用を監視することができる.2 方式のシャドウページングを設計し,実装を行った.それぞれの方式について評価実験を行い,ネイティブなLinux やXenLinux との比較した.その結果,Gandalf がXen より軽量に実現できていること,また,割込み応答性に対して軽微な影響で済んでいることが確認できた.While the provision of secure and reliable, yet efficient execution environments is a must for embedded systems, users' desire for using applications of their own choices is rapidly growing. In order to deal with both requirements, VMMs will be an answer. By using VMMs in embedded systems, we can effectively utilize the resources, improve safety and reliability. We designed and implemented a multi-core processor-oriented lightweight VMM, Gandalf. This paper focuses on shadow paging, which enables memory protection among guest OSes. A VMM can monitor the use of memory by guest OSes through shadow paging. We designed and implemented the two models of shadow paging. The results from benchmark experiments show that Gandalf performs better than Xen.