著者
川畑 龍史
出版者
コ・メディカル形態機能学会
雑誌
形態・機能 (ISSN:13477145)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.9-19, 2019 (Released:2019-11-09)
参考文献数
21

人体の構造と機能を学ぶ学問は、医療専門職(コ・メディカル)領域における重要かつ必須科目である。人体は膨大な細胞および体液や間質からなるが、それらが多様な割合で混ざり合うことで組織、臓器・器官ができ、さらにそれらの機能的な集まりが系統別の器官系をなし、すべての器官系の集合体が人体である。ところで、人体を構成する組織は大きく4つに分類される。すなわち、上皮組織、支持組織(結合組織)、筋組織、神経組織である。この中でも支持組織(結合組織)は、教科書によって分類法や用語・所在に多様な記載がなされ、標本や模型を用いた学修も困難なことなどから、学修者にとって非常に理解し難い概念である。このような解剖学用語を理解するには、実際に生物の解剖を行い、直に形態を観察することがのぞましい。人体解剖の見学実習や動物解剖は、直に形態を観察できる非常に教育効果の高い取り組みである。しかし、実施には多くの条件や準備、コスト、学生への特段の配慮が必要になるなど、取り組む際のハードルは非常に高い。そこで、本稿では、支持組織の特に結合組織の理解を促す方法として、ニワトリの手羽を材料とし、解剖を行い、その有用性を検討した。その結果、手羽の解剖から支持組織(結合組織)に含まれる組織種の多くが観察でき、また、解剖や剖出作業を通じて組織間を強固にあるいは緩やかに連結する支持組織(結合組織)の質感も感じ取ることができた。さらに、結合組織に含まれる数種の組織間比較を行えば、各々の構造的差異が明確となり、病理・病態への理解につながる知見を得ることもできた。以上より、ニワトリの手羽は、結合組織を理解するための良き生物教材になり得るといえる。