1 0 0 0 序文

著者
川端 岳
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.184, 2016

<p> 腹腔鏡下前立腺全摘除術(以下LRP)の最大の利点は開腹手術では困難であった骨盤奥の明瞭な視野が得られ,その術野を多くの人と共有できるようになったことであろう.そのために他施設の術者間で共通の「言葉」で議論し互いに切磋琢磨することが可能となり比較的短期間で安定した術式になったと思われる.一方ここ数年のda Vinci<sup>®</sup>システムの急速な普及,特に2012年よりロボット支援前立腺全摘除術(以下RALP)が保険収載となってからの爆発的な普及によりLRPを施行される機会は激減している.しかしRALPの術式は基本的にLRPの術式をロボット支援下に行うことにより,より洗練され進化し技術的に昇華されたものとも言える.<br> 個人的な事であるが,1999年末に京都大学にて本邦第1例目のLRPが行われ,その場に同席させていただく機会を得た.当時の腹腔鏡手術の経験者達が見守る中,さまざまな障壁を乗り越えて完遂された寺地先生を初めとする京都大学関係者の方々の熱気は決して忘れることの出来ない重大イベントであった.この経験に励まされ,われわれも2000年4月からLRPを開始し術式に各種の改良を加え標準術式として確立する事ができた.本学会誌にて2011年にわれわれの報告も含みLRPの長期成績について特集が組まれたが,その後5年経過したこともあり真の長期成績と言えるまとめが必要な時期が来ており,この度再び特集が組まれたことは時宜にかなっていると思われる.<br> いずれの筆者も非常に多数の症例を経験されている施設での術者であり,さまざまな試行錯誤を重ねられて来たことが本文中に述べられている.その長期成績のご報告はLRPの一つの区切りとして相応しいものであり,今後のRALPの発展のためにも非常に大きな役割を担うマイルストーンになるものと思われる.<br> 本特集が前立腺全摘除術という泌尿器科医にとり今後も重要かつチャレンジングな手術をさらに発展させる糧となれば幸いである.</p>