著者
川﨑 薫
出版者
一般社団法人 日本血栓止血学会
雑誌
日本血栓止血学会誌 (ISSN:09157441)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.544-550, 2022 (Released:2022-10-15)
参考文献数
22

産科DICの発症頻度は0.03~0.35%であり,発症した場合の母体死亡率は5~10%,児死亡率は30~50%と予後不良である.常位胎盤早期剝離,羊水塞栓症,分娩後異常出血,敗血症,妊娠高血圧症候群,急性妊娠性脂肪肝,HELLP症候群などの基礎疾患を契機に発症する.産科DICは急性かつ突発的に発症し,急激に進行することが多い.DICを引き起こしやすい疾患を認識し,早期診断を行い,迅速な治療介入を行うことが母体救命に繋がる.早期診断には,検査所見のみならず産科基礎疾患や臨床所見により評価する産科DICスコアが有用である.治療は,産科DICの契機となった基礎疾患の除去,輸血やフィブリノゲン製剤による補充療法,トラネキサム酸やアンチトロンビン製剤による抗DIC療法を行う.多職種連携による迅速な治療介入が母体救命のために肝要である.