著者
工藤 純夫 和智 明彦 佐藤 潔
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.370-375, 1995-07-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
20
被引用文献数
1 3

MRIを用いて髄液の拍動速度を測定することで,脊髄くも膜下腔内をゆっくり移動する髄液を捉える方法を開発した.本方法により髄液循環における拍動とは異なった髄液のゆっくりした移動が測定可能と考えられた.各年齢層の正常例において,頸髄周囲4箇所の髄液拍動と移動の測定を試みたところ,髄液のゆっくりした移動は脊髄腹側が背側,側面のものに比較して有意に遠かった.また脊髄腹側の髄液移動と髄液拍動速良には正の相関がみられた.髄液のゆっくりした移動速度の年齢分布は乳児期から加齢とともに増加する傾向を有し,10歳前後で100〜200mm/minとpeakに達した.また,頭蓋骨縫合の癒合を認めない新生児,乳児では,1心拍間の髄液移動距離は少ないものの心拍数は多く,1分間の移動距離(速度)は成人に匹敵するかそれを上まわる特徴があった.