著者
工藤 貴也
出版者
一般社団法人日本歯科理工学会
雑誌
歯科材料・器械 (ISSN:02865858)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.525-544, 1988-07-25
被引用文献数
5 2

歯科材料により細胞増殖に影響を受けた細胞の回復の観点から細胞毒性をしらべるべく, 歯科用非貴金属合金の6組成金属元素(Co, Cr, Ni, Ti, Cu, Fe)について4種類の細胞を培養した.細胞増殖度, 浸漬液のpH値および溶出金属量をしらべると共に, SEMによる細胞形態観察もあわせて行い, 以下の結論を得た.1)Eagle MEMならびにDulbecco's modified Eagle mediumでは, 最も多量にCuの溶出が認められた(100ppm以上).ついで溶出量はCo, Ni, Fe, Crの順に少なくなり, Tiは検出できなかった.2)L-929細胞, HeLa S3細胞, HEp-2細胞, Gin-1細胞の細胞増殖度実験の結果から, Cu, Co, Niの順に細胞毒性は低減し, Cr, Fe, Tiではほとんど細胞毒性が認められなかった.3)L-929細胞, HeLa S3細胞, HEp-2細胞の細胞回復度実験の結果から, 6種類の金属とも細胞増殖度実験と同様の結果を示したが, これに反してGin-1細胞ではCoならびにNiで強い細胞毒性が認められた.4)SEM観察では, Cu, Co, Niは細胞に対して強い障害像を示した.これに反して, Cr, Fe, Tiでは細胞形態観察でもほとんど障害は認められなかった.以上の実験結果から, 細胞回復度からみたデータが歯科材料を含むバイオマテリアルの細胞毒性に関して多面的な情報提供の可能性が示唆された.