著者
笠井 順一 市場 政行 中原 万次郎
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
工業化学雑誌 (ISSN:00232734)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.1182-1184, 1960-07-05 (Released:2011-09-02)
参考文献数
8

セメント類の凝結硬化について古くから諸説がある。著者らは新たな観点から,セメント類の水和反応に錯塩化学的な考え方が必要と考え,その一つの例としてマグネシアセメントの水和について調べて見た。すなわち軽焼マグネシアと塩化マグネシウム溶液からマグネシウムオキシクロリドの複塩を生成するまでの時間中にマグネシアは著しい過飽和現象を示すが,そのpHは理論上考えられるほどの変化を示さない。また塩化マグネシウム溶液濃度の増大はマグネシアの最大過飽和溶解度を増大するにもかかわらず,pHは逆に減少することを確かめた。この結果はマグネシアが溶解しても液相中にはOH-の増大を示さないから,マグネシアは液相中でMg2+とOH-に分れて存在している割合が少ないことを証明する。すなわち副塩生成までの過飽和現象は錯塩化学的な因子があり,一般セメント類の過飽和現象の説明の上に参考となるものと考える。