著者
市島 民子
出版者
日本コミュニケーション障害学会
雑誌
聴能言語学研究 (ISSN:09128204)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.16-21, 1988-04-30 (Released:2009-11-18)
参考文献数
15

前言語期の乳児音声における母国語の影響を調べるため,母国語の異なる日本,中国,韓国,米国の乳児の喃語を対象に,比較実験を行った.実験は,『成人による聴取・識別』という方法をとり,専門家,非専門家の2群の日本人成人が,同一月齢(6,8,10ヵ月)の言語比較対(日本-中国,日本-韓国,日本-米国)の中から,日本の乳児の喃語を聴取・識別した.この実験の全識別率(同定率)は,73.8%であったが,各条件での同定率に以下の違いを認めた.1) 言語間では,中国との比較で高く,韓国との比較で低い.2) 月齢間では,10ヵ月は両識別者群とも高く,8ヵ月は群による差がみられた.以上の結果より,喃語には,識別可能な言語間での相違があること.この相違は10ヵ月でより明瞭になり,母国語の影響のあることが示唆された.