著者
市川 瑠美子 小室 竜太郎 井端 剛 正田 英雄 飯田 さよみ
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.23-28, 2012 (Released:2012-02-09)
参考文献数
10
被引用文献数
2

症例は64歳男性.54歳時に2型糖尿病と診断されボグリボース開始となったが10年後に血糖コントロール不良のため糖尿病教育入院となりインスリン強化療法を施行した.抗GAD抗体陰性,尿中C-peptide(CPR)は保たれており2相性インスリンアナログ製剤朝夕2回注射にて退院し良好な血糖コントロールが維持できた.ところが退院後3ヶ月の定期診察日に受診し,帰宅後夕食前血糖が突然562 mg/dlに上昇した.血糖急上昇後1ヶ月の血中CPR 0.10 ng/ml以下,4ヶ月の1日尿中CPR 0.95 μg以下であった.抗GAD抗体陰性であったが,好酸球増多,インスリン抗体陽性を認めた.高血糖が続き再度インスリン強化療法に変更したが血糖コントロールは難渋した.本例は2型糖尿病でインスリン導入後良好な経過中,血糖値上昇の日をとらえられた程の突然のコントロール悪化を認め,インスリン分泌能枯渇をきたした症例と考えられたので病態を考察し報告する.