- 著者
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市川 良平
五月女 淳
中島 満
前沢 嘉彰
- 出版者
- 日本農薬学会
- 雑誌
- Journal of Pesticide Science (ISSN:1348589X)
- 巻号頁・発行日
- vol.19, no.1, pp.S1-S9, 1994-02-20 (Released:2010-08-05)
- 参考文献数
- 9
航空散布における薬剤の分散に関与する主要な要因として, ヘリコプターのダウンウォッシュ, 横風および液滴粒子の大きさの三つを試験の対象にとらえ, ダウンウォッシュについてはヘリコプターから放出したトレーサー (バルーン) の軌跡を介して流れを画像化し, 流れの各部分の速度, 方向を示した.さらに, このダウンウォッシュの画像を基に, 横風の条件を0, 3, 5m/秒と変えた際の流れの状況を画像として示し, ダウンウォッシュに対する横風の影響の状態を明らかにした.次に, このような空気の流れの中に液滴粒子を噴射した場合の液滴粒子の流れについて, 実用的な散布液滴の粒子径に近い2例 (300および100μm径) を対象に諸条件を組合せた事例について検討し, 各液滴粒子の流れを画像として示した.以上の検討の結果, 散布された液滴粒子の多くの部分はダウンウォッシュの渦流の外辺部の流れに誘導されて動き, 当初は下方向に, 地表付近では横方向に流れ, この過程のなかで液滴の分散が進行すると考えられた. 横風は液滴の動きの速度に±の影響を与え, 分散の範囲の広狭, 飛行申心線からの最多付着点のずれの程度を決める重要な要因である.もし液滴を翼端近くで噴射し, ダウンウォッシュの渦流の内側に液滴を投入すれば, 液滴を含む流れは横方向ときには上方向の流れとなって液滴を高い位置にいつまでも留め, その高度の風速が地表付近より強いことも加わって, 液滴の分散幅は非常に広くなり, また液滴が目標に到達しない懸念が生ずることを図 (Fig. 6) は示している.しかし液滴の噴射位置を中央部のみに限定すれば, 液滴の分散幅は狭くなり, とくに風の弱い条件で散布幅が狭い範囲に限定されることもFig.6は示唆している.立毛中の水田を対象にした散布試験における微気象観測と液滴の分散調査の結果は, ダウンウォッシュの横方向への流れが立毛申の水田では株の直上付近でみられ, ダウンウォッシュ±風の流れの中で液滴の分散が進行することを示した.しかし株内ではこの液滴の横方向への流れは衰え, 液滴の動きは垂直方向 (沈降) が主となるため, 株の上下部位別の分散状況はきわめて似たものとなり, この過程のなかで上下部位別付着量は65:35の構成比を示した.