著者
市川 裕通
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.327, pp.72-78, 1983-05-30

四角柱状の建物の長軸を東西方向または南北方向に配置した場合, 東京・冬至における分日影に関する次の2つの事項の検討結果を以下に示す。(イ)同一底面積をもつ建物の臨界高さと平面形との関係。(ロ)同一底面積, 同一高さの建物の分日影面積と形態との関係。(1)臨界高さ臨界高さに関しては, 10, 20, 30, 40, 50分日影とも類似の傾向を示す。すなわち, 南北方向に長いプランほど臨界時のスレンダー比(臨界高さ/東西方向の辺長)は大きく, 一方東西方向に長いプランほどその値は小さくなり, 次第に一定値に近づいていく。そして, 臨界高さを最小にするプランが存在し, 南北方向にやや長いプランがこれに該当する。(2)分日影面積分日影面積に関しても, 10, 20, 30, 40, 50分日影とも類似の傾向を示している。各分日影とも分日影面積の最小値が存在し, 正方形プランおよびその近傍のプランがこれに該当する。すなわち, 建物の高さが低いときは東西方向にやや長いプランが最小値をとり, 臨界高さに近づくにつれて南北方向にやや長いプランが最小値をとるようになる。プランの辺長比が同一で東西方向に長い建物と南北方向に長い建物を比較してみると, 各分日影とも, 建物の高さが低いときには東西方向に長いプランの方が分日影面積が小さく, ある程度高くなると南北方向に長いプランの方が小さい値をとる。特に建物の高さが臨界高さ以上になると.分日影面積の最小値は正方形よりもやや南北方向に長いプランの建物がとり, また.同一辺長比の場合には南北方向に長いプランの方が小さい値をとる。以上より, 10, 20, 30, 40, 50分日影は類似の傾向を示すことが判明したが, これらはいずれも前報の1時間日影の様相とも類似しているのである。おわりに, 本研究に協力して頂いた千葉工業大学昭和55年度卒論生の近江屋収君, 小川健一君, 奥田寛君の3名の諸君に深く謝意を表する。なお, 本研究の一部は日本建築学会学術講演梗概集(九州, 昭和56年9月)に, 日影の様相(その6)-典型的な配置の分日影-としてすでに発表しているものであることを付記しておく。