著者
市橋 万知子
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.822-829, 1960-10-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
20

近年高血圧の集団檢診及びその疫学的研究に関して多くの報告がみられるようになつたが,この中,労働と高血圧の関係については報告も少なく意見も一致しない.これはその集団を形成する各個人の素質,環境に著しい相違があり,また,労働の種類も複雜な爲と思われる.そこで都会の同じような生活水準の警察官という一つの集団を対象として,肉体労働の比較的強い外勤と,肉体労働の弱い室内勤務を主とする内勤の二つを選んで比較檢討し,高血圧の成因について考察を加えた.血圧平均値,高血圧出現頻度共に内勤に有意に高く,一見激務と思われる肉体労働も,労働規準法に規定する範囲内であれば高血圧の発生にはあまり影響がなく,むしろ精神的緊張を伴ないやすい室内の勤務條件の方が強い影響を與えていると考えられる.高血圧者に対しては,臨床檢査として眼底檢査,尿檢査,心電図檢査を実施したが,何れも内勤と外勤の間に有意の差が認められた.