著者
市橋 香代
出版者
日本ブリーフサイコセラピー学会
雑誌
ブリーフサイコセラピー研究 (ISSN:18805132)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.86-96, 2006-12-31

いわゆる「軽度発達障害」という用語は,日本独自の政治的文脈から発展してきたものである。通常の学級においてこれは,特別な支援を必要とする子どもたちの一群を指す。本論では「軽度発達障害」の成立について社会構成主義の観点で二つの方向からアプローチしている。1)マクロなレベルにおいて,一般的な定義をどう構成しているか。2)ミクロなレベルにおいて,個人がどのように定義と出会ってその意味を変容させるか。両方向の共同作業によって定義が構成される一方で,とある疾患を歴史の中で構成するのが医療化のプロセスである。論者は診断分類がただのラベルではなく,可能性を示すものとして扱えると考えている。