著者
八巻 秀
出版者
日本ブリーフサイコセラピー学会
雑誌
ブリーフサイコセラピー研究 (ISSN:18805132)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.7-20, 2017-12-31 (Released:2018-01-20)
参考文献数
39

本論文では,〈ブリーフ〉を再定義するために,まずブリーフセラピーの始まりは,いつなのかを確認する。その始まりは,これまでミルトン・エリクソンとグレゴリー・ベイトソンが多く言及されている。筆者は,〈ブリーフ〉の始まりとして,これらにもう1つ時代を遡って,アルフレッド・アドラーの臨床実践とその思想を加える必要があると考えている。アドラーの臨床実践は,短期的・効果的・効率的という現代のブリーフセラピーの考え方に通じるところは多い。またアドラー心理学は,技法と理論とともに「思想」もあるという三位一体の体系をなしている。これまでブリーフセラピーは,様々な技法と理論が開発され,臨床心理学の技法や理論の発展に大いに貢献してきたが,思想については議論されてこなかった。そこで,アドラーが示した「臨床思想」の検討が,これからの〈ブリーフ〉を考えていく上で,必要になってくると思われる。そこで,ブリーフセラピーの臨床思想につながる共通項として,「臨床的主体性」「臨床的楽観性」「外在化」の3つのキーワードを取り上げて,〈ブリーフ〉の臨床思想の試案を作成した。このような臨床思想を考えていくことで,新しい〈ブリーフ〉の再定義が可能になると思われる。
著者
辻本 聡
出版者
日本ブリーフサイコセラピー学会
雑誌
ブリーフサイコセラピー研究 (ISSN:18805132)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.1-13, 2019-10-31 (Released:2019-11-09)
参考文献数
31

神経言語プログラミング(Neuro-Linguistic Programming: NLP)は人間のコミュニケーションや学習の仕方,それに基づいた治療の方法論が体系化されたもので,誰しもが優れた結果を得るために活用できるとされている。しかし,技法が発展する中,本来は来談者の内的体験を重視する治療姿勢であったはずが,方法論が手順化されているために治療者の援助が単純化され,来談者の体験が軽視されているという問題が指摘されている。また,中には複雑な技法もあるため,治療者が行使する特殊な技能とみなされやすく,来談者の主体的な活用が困難になるということも生じる。本稿では,改めてNLPの概説に触れた上で,フラッシュバックによって外出困難となった事例を提示し,NLPの基本とされるモデルやツール,技法の活用で改善に至った経過を報告し,来談者自ら実施できる効果的なNLP治療について考察した。事例からは,1)症状を「体験様式」として再構成する,2)「地図」による見立ての共有,3)技法の「練習」,といった工夫によって,来談者と共同したNLPの実践が可能となり,基本的な技法でも治療効果を高めることができると同時に,NLPが本来志向する「来談者自らが活用可能」という目的を果たせることが示唆された。
著者
木場 律志
出版者
日本ブリーフサイコセラピー学会
雑誌
ブリーフサイコセラピー研究 (ISSN:18805132)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1-13, 2023-10-31 (Released:2023-10-31)
参考文献数
35

ナラティヴ・セラピーにおけるセラピスト(以下,Th)の姿勢について,事例を提示しながら「エイジェンシー」の観点から論じるとともに,エイジェンシーとブリーフサイコセラピーの関連について検討した。エイジェンシーとは,クライエント(以下,Cl)の好みを探索し理解し続けようとするThとClの間に生成されるものであり,常に更新されていくものだと考えられ,またこのエイジェンシーが生成され続けるようにClの好みを探索し理解し続けようとすることが,ナラティヴ・セラピーのThに求められる姿勢であることが示唆された。そして,エイジェンシーはブリーフサイコセラピーときわめて密接な関連があり,Thがエイジェンシーを生成し続けようとすることは,ブリーフサイコセラピーの実践においても不可欠であることが示された。
著者
廣瀬 雄一
出版者
日本ブリーフサイコセラピー学会
雑誌
ブリーフサイコセラピー研究 (ISSN:18805132)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.53-64, 2021-03-31 (Released:2021-06-10)
参考文献数
8

本研究では「カサンドラ症候群」について,ある女性クライエントに対する面接過程を題材として論じた。近年,わが国で注目されるようになった「カサンドラ症候群」概念であるが,その心理支援についてはこれまで十分な検討がなされてこなかった。それに対し,今回セラピストはナラティヴ・セラピーを用いた臨床実践を試みた。女性クライエントは共感性に乏しく,些細なことに激怒する夫との難しい関係に悩んでいた。セラピストはそこで,「外在化する会話法」を活かしながら,彼女が「ユニークな結果」を通じた新たな物語を見出せるよう支援した。その結果,夫の「頼れる存在」としての価値に焦点が当たり,家族の物語は変化し,その関係は改善へと向かった。

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著者
津川 秀夫
出版者
日本ブリーフサイコセラピー学会
雑誌
ブリーフサイコセラピー研究 (ISSN:18805132)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1-2, pp.27-29, 2017-03-31 (Released:2017-06-30)
参考文献数
2
被引用文献数
1
著者
廣瀬 雄一
出版者
日本ブリーフサイコセラピー学会
雑誌
ブリーフサイコセラピー研究 = Japanese journal of brief psychotherapy (ISSN:18805132)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.72-80, 2014

「書き換え療法」としても知られるナラティヴ・セラピーはオーストラリアのM.ホワイトとニュージーランドのD.エプストンらによって発展した。ナラティヴ・セラピーは心理療法の領域にとどまらない幅広い領域で用いられているが,日本においては西洋との文化的差異もあってか,うまく機能しない場合もあるように思われる。それに対して日本生まれの森田療法が,これを補うことができるのではないかと筆者は考えている。筆者は復職デイケアクリニックであるリワークで勤務している。私はここでナラティヴ・セラピーと森田療法の併用を試みている。本研究の目的は,実際のケースを提示しながら,この2つの療法の組み合わせがどのように機能するのかについて検討することである。
著者
木内 敬太 青木 安輝 岸 克昌 矢口 明子 山本 立樹
出版者
日本ブリーフサイコセラピー学会
雑誌
ブリーフサイコセラピー研究 = Japanese journal of brief psychotherapy (ISSN:18805132)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.4-16, 2015

本研究では,解決志向アプローチ(SFA)によって促進し得る,職場の肯定的な相互作用を測定するための心理尺度,二層性解決志向コミュニケーション尺度(BSIS:Bi-1evel Solution-focused Interaction Scale)を開発し,その信頼性と妥当性を検討した。第1研究では,SFAの実践家85名を対象に自由記述式の質問紙調査を実施し,質問項目を作成した。第2研究では,SFAの実践家と製造業企業の従業員を対象に質問紙調査を行い(n=536),尺度構成を行った。第3研究では,別の製造業企業の従業員を対象に質問紙調査を行い(n=211),尺度の信頼性と妥当性を検討した。本研究によりBSISの信頼性と妥当性が確認された。今後本尺度によって職域におけるSFAの研究と実践が促進されることが期待される。