著者
市江 愛
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.178, pp.94-108, 2021-04-25 (Released:2023-04-26)
参考文献数
18

日本語の条件文は従属節末に接続形式が置かれるため,従属節末になって初めて条件文だと分かる。一方で,モシという語句は条件文の成立に関係がなく,あってもなくてもよいが,必ず従属節末の接続形式に先行して置かれ,仮定的な条件文であることを明示する。そのモシの性質に着目し,本研究では日本語の仮説条件文の文処理過程において,モシの有無と位置が影響を与えるのか明らかにすべく,日本語話者と,四つの異なる言語をL1にもつ日本語学習者を対象に,自己ペース読文実験を行った。その結果,日本語話者にはモシの有無と位置で差はないが,日本語学習者はそのL1 に関係なく,モシがあることで文処理が促進され,読み時間を短くし正答率を高くすることが明らかとなった。この結果は,第二言語習得研究における理解過程の解明に貢献するだけでなく,やさしい日本語への応用も考えられ,多文化共生が進む日本社会への有用な知見となり得るだろう。