著者
布施 浄明
出版者
智山勧学会
雑誌
智山学報 (ISSN:02865661)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.203-222, 2020

<p> 『播鈔』研究会では、報恩院流聖教の一つ、醍醐寺学僧教舜が弘長年間に憲深より四度の伝授を受けた記録書『四度口伝鈔』の校訂・訓下を行っている。本論では胎蔵界の伝授記録「胎蔵界口伝鈔」三巻(以下「本鈔」)の一部である如来身会(大恵刀、大法螺、蓮華座)の校訂解説を紹介したい。はじめに『広次第』と現図曼荼羅の相応していないことを挙げ、次に「本鈔」下巻の部分校訂・訓下・解説を付した。解説に当たっては隆誉の『伝授要意』を参照した。さて、如来身会は念誦法である住定観(身密)、正念誦(口密)、字輪観(意密)の前に修されるものである。『広次第』では、これらの観に入り易くするために、それに先立ち如来身会を修して自身の三業を清め、如来の三密を具足し、念誦法にて仏と一体ならしむのである。</p>