著者
布施 綾子
出版者
システム農学会
雑誌
システム農学 (ISSN:09137548)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.55-62, 2011-04-10 (Released:2015-06-04)
参考文献数
9
被引用文献数
4

都市部におけるイノシシによるヒトへの危害防止を目的として、2002 年に神戸市において日本で初めて「イノシシ餌付け禁止条例」が制定された。条例が施行され8 年以上が経過したが、条例制定の前後でイノシシの出没状況がどのように変化したかは明らかにされていない。本研究の目的は山林に隣接した神戸市六甲山南部の市街地のイノシシの出没状況と住民の意識から、イノシシとヒトとの関わり方について検討することにある。まず、条例施行前の2000~2001 年に神戸市東灘区天上川流域にてイノシシの出没状況を調査した。次に、条例施行後の2009 年9~12月に、イノシシの出没現場踏査、インタビュー調査、アンケート調査、イノシシの追跡調査、イノシシに対するヒトの意識調査を行った。結果は、条例施行後は道路上でのイノシシ出没頻度は減少し、イノシシへの間接的な餌付け場所となるゴミ集積場での被害も減少することを示した。一方で、河床に生存するイノシシの個体数は増えていることが観測され、河床の段差工の高低差が大きく山に帰る事ができず封じ込め状態にある事が明らかになった。また、市民の条例に対する認識度は74%と高いにも関わらず、天上川河床に生息するイノシシへの直接的な餌付け行為は継続されていた。河床のイノシシに対するヒトの意識は好意的なものが多く、餌付けは感情に基づいたものと言える。餌付け禁止条例の効果はある程度認められたが、今後イノシシとヒトとの適切な関わりを構築するには、イノシシの生息環境やヒトの感情に配慮した施策が求められる。
著者
布施 綾子 福島 慎太郎
出版者
システム農学会
雑誌
システム農学 (ISSN:09137548)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.41-48, 2014-04-20 (Released:2015-06-04)
参考文献数
13
被引用文献数
1

2002年、神戸市ではイノシシからの危害防止のため、「イノシシ餌付け禁止条例」が制定された。本研究は、神戸市東灘区内におけるイノシシに対する人の行動、人の行動に対するイノシシの反応に関する調査に基づき、河床部と山間部での人の行動差を検証し、人とイノシシとの共生の方策を探ることを目的とした。調査は、2010年11月から2011年3月にかけて行い、天上川中流部にて河床に定着したイノシシと、保久良山付近に生息するイノシシに対する人の行動を観察・比較した。人のイノシシに対する行動を無関心的行動・能動的行動・積極的行動・敵対的行動・逃避的行動にカテゴリー別に分類するとともに、人の行動に対するイノシシの行動を活動的行動・物欲的行動・攻撃的行動に分類した。イノシシが河床に生息している天上川中流部付近はイノシシと人が隔離された状況にあるが、保久良山付近はそのような隔離状況はなく、その物理的な環境の差が人のイノシシに対する行動に差をもたらすかを明らかにするために、両場所における人の行動の差をχ2 検定により検証した。続いて、男女比、年齢層比の影響を統制しても、カテゴリー別の行動に地域差がみられるか否かを検証するために、ロジスティック回帰分析を実施した。その結果、無関心的行動は天上川中流部付近と若年層・中高年層において、能動的行動・積極的行動は保久良山付近と未成年層において多く確認された。また、餌付け行動も未成年層が多くとっていることが確かめられた。更に、イノシシに対する人の能動的行動・積極的行動はイノシシの物欲的行動を誘発する可能性があることが確かめられた。
著者
布施 綾子
出版者
Kyoto University
巻号頁・発行日
2015-11-24

新制・課程博士