著者
常門 めぐみ 中富 明子 島内 彩 國場 英雄
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.389, 2018

はじめに施設に入所する重症心身障害児(者)にとって食事は生活の中で最大の楽しみのひとつである。重度の身体障害や知的障害により摂食・嚥下機能が獲得不十分であったり、また加齢とともに通常より早期に機能低下を来すことも多い。また精神障害を合併し盗食や誤食など適正な摂食行動をとれないことがある。一方、誤嚥は気付かれずに、精査で明らかになることも多い。今回われわれの施設において、誤嚥を反復し、多職種チームで栄養、食事管理に介入した症例を報告する。症例26歳、脳性麻痺。知的年齢3歳程度。こだわりが強く不安時に自傷行為を繰り返す。以前よりときどき発熱していたが、24歳時に膿胸を発症。嚥下造影検査の結果、誤嚥を確認。膿胸改善後も経口摂取困難あり。目的体重の回復・食事形態の改善、そして本人が落ち着いて食べられることとした。方法1.連携:家族、医師、言語聴覚士、看護師、栄養士で食事内容や形態について検討した。2.環境調整:盗食・自傷があるため、抑制を含め安全に落ち着いて食べられる環境調整をした。3.手技の統一の伝達:介助手技を病棟全体に伝達し統一に努めた。結果誤嚥を予防しながら安全に食事を取れるようになった。本人も協力して楽しめるようになってきた。発熱回数は明らかに減少し、体重の回復とともに活気も見られるようになった。まとめ介入後、発熱回数は明らかに減少し本人も協力して誤嚥を予防できていると思われた。多職種チームで検討を行い言語聴覚士および担当スタッフ主導で症例の嚥下状態や介助手技を病棟全体に伝達し、一定の環境調整や介助を継続した。これまで大量にかき込むように食べ、誤嚥を繰り返していた症例が、落ち着いた環境で一口ずつ嚥下をするというペースを習得し誤嚥性肺炎による発熱回数の減少につながった。誤嚥の原因としては抗精神病薬が考えられたが、自傷行為のため抗精神病薬の中止はできなかった。