- 著者
-
平元 逹也
- 出版者
- 日本ファイナンス学会 MPTフォーラム
- 雑誌
- 現代ファイナンス (ISSN:24334464)
- 巻号頁・発行日
- vol.12, pp.31-55, 2002-09-30 (Released:2018-12-07)
- 参考文献数
- 28
- 被引用文献数
-
2
本研究では,日本企業を対象に,比較可能な専業企業のポートフォリオから求めた多角化企業の理論上の企業価値と実際の価値との比較によって,多角化による企業価値への影響を検証した.分析結果から,多角化による企業価値の破壊が確認された.多角化の辿展により価値破壊は増大し,関連事業への多角化も非関辿事業への多角化と同様に企業価値の破壊をもたらすことが確認された.企業の多角化は経営者の専門性の低下,経常資源の分散などによるマイナスの影響を引き起こし,多角化の進展はその影響を強めると考えられる.関連事業への多角化は,事業間のシナジー効果が期待できるが,関連事業であるがゆえの事業間のコンフリクト,重複投資による非効率性などにより企業価値にはマイナスの影響を与えると考えられる.また,ガバナンス構造との分析では,メインバンクは債権者の立場から,多角化に対してもモニタリング機能を果たしているという示唆が得られた.