- 著者
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平塚 沙織
- 出版者
- 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
- 雑誌
- 関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
- 巻号頁・発行日
- vol.25, pp.60, 2006
【はじめに】前十字靭帯損傷はスポーツ時の受傷が多く、再建術後のスポーツ復帰時期については、術後期間や筋力測定結果が参考になる。今回、術後4ヶ月時の筋力測定データを中心に健側・患側の筋力差を比較検討したので報告する。<BR>【方法】2004年7月から2005年6月に当院で手術を行い、その後術後約4ヶ月で筋力測定した患者40名(男25名、女15名)を対象とした。術式は、半腱様筋腱と薄筋腱を用いたquad-STG法。平均年齢は31.1±10.3歳(13歳から52歳)。受傷機転は、スポーツ外傷37名、その他3名。測定機器は、BIODEX SYSTEM3Cを使用し、術後約4ヶ月時の膝伸展・屈曲筋力を測定した。角測定は60,180deg/secに設定し求心性収縮運動とした。測定結果の最大トルク値における欠損に注目した。また某社が公開している60deg/secでの膝伸展,屈曲筋力の年代別平均値を、一般レベルで特にトルク/体重値に着目し比較した。<BR>【結果】角速度60deg/secにおける膝伸展筋力の欠損は平均37.0±14.9、膝屈曲筋力の欠損は平均27.9±17.0。角速度180deg/secにおける膝伸展筋力の欠損は平均29.8±11.3、膝屈曲筋力の欠損は平均18.4±15.9であり、術後4ヶ月ではスポーツ復帰の目安としている膝伸展筋力最大トルクでの欠損(20%以下)は、殆ど認められなかった。しかし膝屈曲筋力では欠損20%以下の例は多く見受けられた。また某社の平均値との比較では、健側が平均値を上回る例が膝伸展筋力で34例,欠損平均は36.7±15.8。膝屈曲筋力で24例,欠損平均は28.2±19.6。健側患側ともに平均値を上回る例は膝伸展筋力で5例,欠損平均は20.9±7.1。膝屈曲筋力で11例,欠損平均は12.9±13.4。さらに健側患側ともに平均値を下回る例は膝伸展筋力で6例,欠損平均は38.7±8.8。膝屈曲筋力で16例,欠損平均は27.3±12.8だった。平均値比較では数的に膝伸展筋力が膝屈曲筋力よりも強く見えるが、欠損平均を見ると膝屈曲筋力の方が欠損20%以下に近い。また健側患側ともに平均値を下回った例では、上回った例に比べて欠損平均は高い。<BR>【考察】早期にスポーツ復帰するためには、術後早期に左右平均的な筋力がほしい。今回の結果から、膝伸展筋力よりも膝屈曲筋力の方が早期に回復する。また両側の筋力が平均値よりも低い場合健患差は大きくなっていた。これは両側の筋力が弱い程回復が遅くなると考えられた。もしそうであるなら術後ならず、手術以前からの筋力増強が必要であると考えられた。